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米国関税の「飛び火」…グローバル経済のしわ寄せ
さらに中小企業を追い詰めるのは、国際情勢の不安定さです。今回の調査では、米国による関税強化の影響についても分析されています。全体の76.9%の企業が「影響はない」と回答したものの、6.5%の企業は「マイナスの影響がある」と答えており、特に製造業での影響が顕著です。
山田社長の会社も、その影響を受けています。「うちは直接アメリカと取引があるわけじゃない。でも、取引先の金属プレス工場が『半導体の受注が減った』って言ってて、間接的にウチの仕事も減ってるんです。輸送ルートが不安定になったって話も聞きますしね。遠い国の話だと思ってたら、気づけばすぐそこまで来てるんですよ」。
実際に、関税によって「30%超の減収」となった企業が11.0%に上るという数字は、この「飛び火」がいかに深刻かを示しています。「半導体の受注が減少し、他製品へ注力中」(金属プレス製品製造業)、「輸送ルートの遮断により国内回帰を余儀なくされた」(アパレル縫製業)といった生々しい声は、外的リスクが企業努力だけでは克服しがたい現実を物語っています。
中小企業の未来はどこへ?
2025年春時点の小企業を取り巻く経営環境は、まさに「三重苦」いや「四重苦」と呼ぶべき状況です。売上・採算の悪化、価格転嫁の限界、そして予測不能な国際情勢。これらが複合的に中小企業を襲い、多くのオーナーは「もう、こんな日本じゃやってられん!」と悲鳴を上げています。
一方で、わずかな希望の兆しもないわけではありません。製造業では若干ながらマイナス幅の縮小が見られ、価格転嫁が可能な業種や、高付加価値商品を扱う企業では改善の余地がある可能性も指摘されています。
しかし、山田社長は厳しい表情のまま。「高付加価値ねえ……。そんな簡単にできることじゃないですよ。ウチみたいな下請けは、言われたものを作るしかないからね」
原材料高騰や為替変動への支援策、価格転嫁を促す環境整備、さらには新たな販路や輸出機会の創出。そして、関税リスクへの対応としてのサプライチェーンの見直しや国内製造基盤の強化。これらは、喫緊の課題として、国を挙げて取り組むべきテーマです。中小企業は、日本経済の屋台骨。その屋台骨が悲鳴を上げ続ける限り、国民の暮らしも、この国の未来も絶望的といえるのかもしれません。
[参考資料]
