今週の注目点…日米為替協議や米景気動向
円安是正の議論も、対外的な説明は抑制される?
今週はカナダで行われるG7財務相会議のタイミングで、日米財務相会談も行われる見通しになっているため、為替協議が注目を集めることになりそうです。では日米関税交渉のなかで為替問題が取り上げられることになるかといえば、トランプ政権側は円安などを非関税障壁と位置づけているわけなので、日本向けの関税率引き下げ交渉の俎上に円安是正が取り上げられる可能性はやはり高いのではないでしょうか。
4月下旬に加藤財務相とベッセント米財務長官による会談が行われた際には、具体的な「通貨目標」などが求められることはなかったと財務省は説明しました。ただ当時はトランプ大統領の相互関税発表をきっかけに起こった「関税ショック」で「米国売り」がくすぶっていたことから、それを悪化させるリスクのある為替の議論を控えたということだったのではないでしょうか。
逆にいえば、そんな「米国売り」リスクが一段落したと判断すれば、為替について踏み込んだ議論になる可能性はあるでしょう。そもそも、上述のように先週米韓の交渉で為替が協議されたとの思惑が流れたことも、そのような文脈、つまり「米国売り」リスク一段落で為替を協議しやすくなっているといった具合に理解されることではないでしょうか。
ただし、米国側が具体的な目標を設定するなど強い円高圧力をかけてくることはあるかといえば、それは微妙でしょう。たとえば、「米国が120円までの円高誘導を要求」などとなった場合、為替市場から米ドル買いは消滅し、米ドル売りが殺到しかねないでしょう。
その意味では、実際にはかなり踏み込んだ円安是正、円高誘導への議論を行ったとしても、対外的な説明は極力控えられたものにとどまり、たとえば「日米はともに通貨安が互いの貿易にとって不公正なものにならないように配慮し、金融、通貨政策を緊密に協力する」といった程度の内容にとどめ、基本的には合意文書に盛り込む可能性も低いのではないでしょうか。
今週は143円~147円で方向感定まりにくい展開か
日米関税交渉以外では、米景気の動向が引き続き注目されるでしょう。米GDPは2025年第1四半期が2022年以来のマイナス成長となりましたが、足下の第2四半期については2%程度のプラスに転換するとの見方も浮上してきました。米景気の急減速や景気後退への懸念の後退は、米ドル先安観の見直しにつながる可能性があるだけに、引き続きしっかり見極めていく必要があるでしょう。
米中の緊張緩和を受けた世界的な株高、リスクオンでも先週の米ドル高・円安が一時的にとどまったことを考えると、この先も米ドル高・円安への戻りはおのずと限られるのではないでしょうか。一方、米国からの円高圧力も表面的には曖昧なものにとどまる可能性が高いと思うので、米ドル安・円高リスクが急に拡大する可能性も低いのではないでしょうか。このため今週の米ドル/円は、143円~147円で方向感の定まりにくい展開を予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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