米国の財政赤字はなにから生じているか?
ベッセント財務長官は就任前から米国の政府債務に懸念を示してきました。また、先月を思い出すと、相互関税の発表直後に米国の長期金利が上昇したために、相互関税の上乗せ分が90日間、延期されたといわれています。
米国の貿易赤字のGDP比は4%である一方、政府の財政赤字はGDP比7%に迫ります。ベッセント長官や著名投資家のレイ・ダリオ氏は「米国は財政赤字(後者)を3%に減らすべき」としています。これを実現できれば、米国の貿易赤字(=現在4%)も同じだけ(=4%分)減り、貿易収支は均衡する計算です。
この点を深堀りしてみます。米国の資金循環統計をみますと、米国は家計部門と企業部門は資金余剰で、赤字になっているのは政府部門だけです。
これをみると、「だったら問題は家計の消費ではなく、政府が歳出を減らせばよい」と思うかもしれません。しかし、そうではありません。
というのも、政府がお金を借りて、なにに使っているかをみますと、社会保障支出による家計への所得移転が拡大しています。オバマ政権以降が特にそうですが、メディケアやメディケイドなどで歳出が増大しています(→5月12日に公表された薬価の引き下げもこれに関連しているでしょう)。
実際には「政府が家計にお金を渡す、家計は政府から受け取る分までしっかり消費に使い切っている」という状況が生じています。政府の補填がなければ本来は家計が赤字です。(家計に補填している)政府が家計のかわりに赤字になっています。
以上をまとめると、たしかに米国政府には、家計への所得移転という歳出に問題があります。しかし、政府がこれを削減するならば、家計は実入りが減るため、消費を減らすという本来の過剰消費の問題に帰着します。先のベッセント長官の指摘のとおりです。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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