2025年問題と日本財政への影響
さらに視野を広げると、バブル世代の大量退職は「2025年問題」とも密接に関連しています。2025年には、団塊の世代(1947–49年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)に突入し、日本の医療・介護需要が急増します。
一方で、労働人口の減少により、社会保険料を支える現役世代の負担が増大。医療費や介護費用の膨張と、財源である保険料の減少という「二重苦」によって、日本の財政はさらに厳しい局面を迎えることが懸念されています。
この状況下でバブル世代の大量退職が進めば、労働力不足による生産性低下と、社会保障費用の増大が同時に進行するという、非常に厳しい局面を迎えることになるでしょう。
企業と政府に求められる対応策
これらの問題を乗り越えるためには、企業と政府が一体となって対応策を講じる必要があります。企業においては、まず60歳以降の給与体系を見直し、意欲ある高齢社員が活躍し続けられる職場環境の整備が求められます。
加えて、リスキリング(学び直し)の推進が不可欠です。特に、ITスキルやAIの活用能力など、デジタル社会に対応できるスキルを高齢社員に習得させることで、生産性の高い人材として活用できるようになります。
一方、政府には、在職老齢年金制度の見直しをはじめ、高齢者雇用を促進するためのインセンティブ制度の拡充など、より現実的かつ柔軟な制度改革が求められます。
リスキリングが未来を変えるカギに
特に重要なのが、個人によるリスキリングの取り組みです。60代になっても新たなスキルを学び直し、自らの市場価値を高めることが強く求められます。
たとえば、基本的なパソコンスキルに加え、クラウドサービスやAIツールの活用法、さらにはデータ分析やプログラミングなどの分野にも挑戦することで、セカンドキャリアの幅が大きく広がります。
これからの時代、「年齢に関係なく学び続けること」が、働き続けるための最重要条件になるといえるでしょう。
バブル世代の退職が日本にもたらす未来
2025年以降、バブル世代の大量退職が本格化します。これに伴う労働力不足、社会保障費の増大、企業組織力の低下といった問題が、日本社会全体に大きな影響を及ぼすことになります。
その対策として、企業は高齢社員の活用を進め、政府は柔軟な制度改革を行う必要があります。そして、個人自身もリスキリングを通じて、変化に対応する力を身につけることが求められます。
この問題は、もはや一部の層だけに関係するものではなく、日本社会全体に関わる重大な課題です。私たち一人ひとりが当事者意識を持ち、真剣に向き合っていく必要があるのです。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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