(画像はイメージです/PIXTA)

バブル景気の絶頂期に社会へと巣立った「バブル世代」。まもなく本格化する彼らの定年退職は、深刻な労働力不足や、在職老齢年金・賃金制度の課題など、日本社会全体に大きな影響をもたらそうとしています。本記事では、銀行員として働いていた経験もある公認会計士・税理士の岸田康雄氏が、バブル世代の大量退職が日本にもたらす影響と、企業や個人に求められる対応策について詳しく解説します。

 富裕層にも、富裕層を目指す人にも読んでほしい 
 〈ゴールドオンライン新書〉が登場! 

バブル世代とは?その定義と背景

まず、「バブル世代」とはどのような人々を指すのかを整理しておきましょう。

 

一般的にバブル世代とは、1987年から1993年に新卒として社会に出た世代を指します。この世代は、いわゆる「バブル景気」と呼ばれる日本経済の絶頂期に社会人としてのキャリアをスタートさせました。経済的に非常に恵まれた時代背景のなかで働き始めたことが特徴です。

 

彼らの生まれ年は1965年から1970年頃とされ、現在はおおむね60歳前後。このため2025年以降に定年を迎える人が急増することが見込まれています。

 

当時の日本は、不動産価格が高騰し、ジュリアナ東京やマハラジャといったナイトクラブが流行するなど、バブル経済の象徴ともいえる時代でした。このような活気に満ちた環境のなかで社会人となったバブル世代は、比較的高い給与水準や恵まれた雇用環境を経験してきました。

バブル世代の退職がもたらす労働力不足の危機

バブル世代が定年を迎えることにより、日本企業は深刻な労働力不足に直面します。特に、現在は管理職や専門職として組織の中核を担う層が大量に退職することで、単なる人数の減少にとどまらず、組織運営力や技術の継承にも大きな影響が及ぶと懸念されています。

 

さらに、60歳を超えたあとの再雇用制度では、多くの場合給与が大幅に減少します。このため、意欲を失って早期退職を選ぶ人や、セカンドキャリアを求めて転職を図る人が増える可能性があります。これらが重なることで、企業における人材不足は一層深刻化するでしょう。

60歳以降の賃金低下と役職定年の現実

日本企業では、一般的に52歳前後が給与のピークとされています。そのあと、55歳を過ぎると「役職定年」を迎え、管理職から一般職へと戻されることが多く、さらに60歳を超えると給与水準が大幅に低下するのが通例です。

 

たとえば、大手銀行では53歳で役職定年となり、その時点で給与が半減することが知られています。このような厳しい現実に直面すると、モチベーションの低下は避けられず、その結果として企業全体の生産性にも悪影響が及ぶ恐れがあります。

年金制度の落とし穴「在職老齢年金」とは

60歳を過ぎても働き続ける人が多いなか、問題となるのが「在職老齢年金制度」です。この制度では、一定の給与を得ながら年金を受給している場合、所得が一定額(現在は月50万円)を超えると年金が減額される仕組みとなっています。

 

たとえば、月収40万円で年金を月15万円受給している場合、合計55万円となり、超過分5万円の半分である2万5千円が年金から減額されます。つまり、「働けば働くほど手取りが減る」という、労働意欲を削ぐ大きな要因となっています。

 

この制度によって、65歳を超えても働き続けたいと考えている人々の意欲が大きく削がれ、結果として労働市場全体の活力低下を招いているのが現状です。

 

★あなたの老後、いくら変わる?バブル世代の「在職老齢年金 vs 退職」問題を解説!

バブル世代は在職老齢年金と退職どちらを選択するか?【銀行員として働いた公認会計士が解説】

次ページ2025年問題と日本財政への影響

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧