相続税だけでなく「譲渡所得税」にも注意
法人に財産を移転するとき、値上がりしている場合は譲渡所得税がかかります。その際に重要なのは、「譲渡損」が出ているものと「譲渡益」が出ているものとを、同じ土俵に上げて同時に処理することです。
プライベートカンパニーを使った相続税の節税では、相続税だけではなく「譲渡所得税」にも注意を払う必要があるのです。例えば、かつて別荘等を購入して、その後、価格の下落で含み損を抱えている物件がある、といった人は多いと思います。実は、そういう物件も意外と使い道があります。含み損を抱えている分、譲渡益を相殺することができるからです。
特に、含み損を抱えているのは自宅の場合が多いといえます。バブル崩壊以後、日本のマンションの多くは、購入した瞬間に評価額が一気に8割程度に下落する傾向があり、ほとんどの人が評価損を抱えているはずです。3000万円で購入した物件も、数年程度経てば2000万円程度に評価が下落し、1000万円以上の評価損を抱えるのが普通なのです。「個人」という立場で保有していても節税の役に立ちませんが、法人に売却すれば他の部分で譲渡益が出ても、1000万円分は相殺できることになります。
先祖代々の土地しかない人は早めの対策を
また、先祖代々の土地は所得税法上では5%をその土地の取得費として認めてくれることになっていますが、実質的には取得価格はゼロですから、その上に建物が建っている物件を法人に売却(譲渡)すれば、簡単に譲渡益が出てしまいます。相続でもらった土地にアパートを建設しているような場合も譲渡益が出やすいわけです。
例えば、その土地が都心部にあって時価が2億円ぐらいする場合、最悪のケースでは2億円がそっくり譲渡所得税の対象になってしまい、4000万円程度(長期譲渡所得の場合)の税金を納めなければならなくなることもあります。
先祖代々の土地しかない、という人の場合は、やはり真剣に早いうちから相続税対策をしないと相続税をゼロに近づけることはできないかもしれません。場合によっては、値上がり益が発生しにくい建物部分のみを法人に売却することも検討する必要があるかもしれません。