前回は、不動産鑑定士に「不動産鑑定評価書」の作成を依頼する際の注意点について説明しました。今回は、分割払いによる法人への資産移転について見ていきます。

分割払いによる資産移転は意外とスムーズ

親の資産を子どもの法人にシフトさせる方法のうち、意外とスムーズにいくのが「分割払い」です。たとえ親子間であっても「金銭消費貸借契約」などの書式にして、当事者同士が署名捺印して契約を交わすことが必要になってきます。

 

できれば、金利もきちんとつけるほうがベターだと思います。現在なら年2%程度つけておけば問題はないでしょう。また日々の賃料等のお金は銀行を通して振り込みで処理し、きちんと〝足跡〞を残すことが大切です。少なくとも父親などが亡くなるまではそうすべきでしょう。

 

こういうスキームは、通常税理士が金銭消費貸借契約書などの書面を用意してくれますし、何らかの形で税務署が見てわかる「証拠」をそろえます。万一、税務署から「これは相続税逃れじゃないの?」といわれてしまうと大変ですから、こうした書面をきちんと作っておき、足跡を残すのです。銀行の通帳やネットでの取引の書類など、税務署が見てわかるものであれば何でもかまいません。

 

金銭消費貸借契約書も不安であれば、万全を期して公正証書にしておくといいかもしれません。いずれにしても、年収で2000万円を超すような人というのは、税務署が銀行などで情報を収集して、税務調査に入るかどうか考えるといわれています。年収が多い人は、それなりにきちんと準備しておくことが大切でしょう。

金融資産の額が大きくならないよう努力を

一方、分割払いの場合、注意したいのは、親の資産がキャッシュとなってプールされていくことです。金融資産のまま放置していると現金がどんどんたまってしまうために、ある程度早い時期から「生前贈与」などを通して、相続税の対象から外していく努力が必要といえます。

 

銀行ローンのように多額の資金がドカンと入る場合は、子どもの会社に出資するといった方法も可能ですが、分割払いの場合はそうもいきません。少なくとも、相続税の申告を迎えるまでに、相続税の基礎控除以内にしておくことが節税の最良な方法です。

 

例えば、平成25年4月から実施されている「孫への教育資金」について1500万円まで非課税にする生前贈与が制度化されましたが、こうした制度を活用するのも方法のひとつです。同居している家族に関してはもともと非課税ですが、田舎の実家の両親が孫に教育資金を贈与する際には活用できるはずです。

 

さらに、贈与税の非課税枠として年間110万円がありますから、こうした制度を活用することも重要になります。年間の大学の授業料程度は、おじいちゃん、おばあちゃんが負担してくれる――そんなことがあってもいいでしょう。

 

親と一緒に住んでいるのであれば、生活費などさまざまな経費は親に支払ってもらうといいかもしれません。親が支払えば、結果的に現金が少なくなり、金融資産が減少して相続税の課税対象額が減少していきます。

 

この他に会社で私募債を出していくといった究極の方法がありますが、利子がつくために、利子所得が高くなってしまう可能性があります。利子所得は、年間で20万円までは非課税のために申告の義務もなくなり、それを超えない金額内に収めるのがベストです。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続税は不動産投資と法人化で減らす』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税は不動産投資と法人化で減らす

相続税は不動産投資と法人化で減らす

成田 仁,富田 隆史

幻冬舎メディアコンサルティング

従来より相続税対策として考えられてきた、アパートや小規模ビルなどの建設。しかし、それこそがリスクをもたらしているかもしれないとした…。 本書は、持て余している土地を収益性の良い賃貸物件に買い替える不動産投資の最…

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