前回は給与所得控除、小規模企業共済、経営セーフティ共済などを利用した節税法について説明しました。今回は、不動産ビジネスを開始するにあたり、「万が一」のケースにも活用できる節税法について見ていきます。

不動産ビジネス開始後には「万一の備え」も考えておく

法人を設立して不動産ビジネスを始めた以上、何かあったときのための備えはしておきたいものです。生命保険に入っておくのも、備えのひとつとしては大切です。

 

相続も生命保険も〝人が亡くなったときに大きなお金が動く〞という点で、切っても切り離せない関係にあります。いろいろな活用法がありますが、ここでは主に、納税資金の確保と、いわゆる〝争続対策〞への活用に絞ってお話をします。

 

相続対策の基本は、税金を減らすことと納税資金を確保しておくことですが、いつ必要になるか予測がつかない納税資金を準備しておくには、相当額を現金のままにしておくか、換金しやすい資産にしておく必要があります。

 

総じて換金しやすい資産は、相続財産としての評価は高いものです。例えば、納税資金は生命保険で、と割り切り、手元の資産を賃料収入を生む不動産に組み換えて相続財産としての評価を下げ、その賃料収入で生命保険に加入することも有力な選択肢のひとつとなります。

 

また、未上場企業の経営者にとっては、換金性が低くて評価の高い自社株の対策にも有効です。例えば、賃料収入のある資産管理会社が加入していた生命保険を活用して、相続人(配偶者および子ども)から自社株を買い取れば、相続人は納税資金を確保でき、相続による株の分散も防止できます。また、争続対策にも有効です。

「民法上の相続財産ではない」という特性を生かす

意外とご存じない方も多いのですが、「生命保険金は民法上の相続財産ではない」という特性があります。言い換えると、遺産分割協議の対象財産ではないということです。
つまり、相続人の間でもめることになってしまい、遺産分割に時間がかかったとしても、生命保険金だけは保険会社から受取人にお金が支払われます。

 

例えば、銀行に預金してあった3億円の現金は、相続人(例えば3人)全員の合意がないと分けられないどころか、口座が凍結されて引き出せませんが、仮にその3億円が生命保険契約として預けられ、1億円ずつそれぞれ受取人が指定されていた場合は、各々の受取人からの請求で保険金が支払われます。

 

また、これは余談ですが、相続財産ではないということは、亡くなった方の負債が大きすぎて相続放棄した場合でも、保険金は別途受け取ることができるということです。ある意味、この点が生命保険金の最大の特徴といえるでしょう。

 

また、この生命保険も個人と法人では税制上の扱いに大きな差が出ます。個人の場合は、生命保険料控除といっても、一般の生命保険で4万円、個人年金保険4万円、介護医療保険4万円で、最高12万円までしか認められていません。住民税も合計で7万円が限度です。ところが、法人になると会社が生命保険の契約者となって、被保険者を会社の役員や従業員に、受取人を会社や役員、従業員の遺族にすることで、最高2分の1まで必要経費として計上することができます。

 

最近の生命保険業界の法人向け保険というのは、種類によっても異なりますが、3年とか4年経てば90%以上の金額の保険料が償還されるものもあり、節税対策として極めて魅力的な商品になっています。

 

こうした生命保険もそうですが、ただ単に個人の不動産ビジネスとして税務処理をすると、非常に高い税金を納税しなければならなくなります。しかし、法人を設立して経由することでさまざまな税法上のメリットが生じて節税につながります。法人を使った節税法を駆使してこそ、相続税対策にもつながることを忘れないことです。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続税は不動産投資と法人化で減らす』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税は不動産投資と法人化で減らす

相続税は不動産投資と法人化で減らす

成田 仁,富田 隆史

幻冬舎メディアコンサルティング

従来より相続税対策として考えられてきた、アパートや小規模ビルなどの建設。しかし、それこそがリスクをもたらしているかもしれないとした…。 本書は、持て余している土地を収益性の良い賃貸物件に買い替える不動産投資の最…

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