バブル期に購入など「含み損」のある物件を活用
今回は、「譲渡益」と「譲渡損」の関係について、もう少し詳しく見ていきましょう。
個人が保有する不動産をプライベートカンパニーに譲渡する場合、譲渡所得が発生しにくいケースには次のようなものもあります。
日本がバブル経済に沸いた1980年代後半、もしくはまだ不動産が高かった90年代前半に、不動産を割高で買った人は、現在でもまだ含み損が出ているはずです。そのような、含み損が出ている物件と先祖代々からの土地を、同時に親から子どもが設立した会社に売却してしまう。そんな方法を使うことで含み損と譲渡益を相殺することができます。
譲渡損益はそれだけで損益通算できますから、場合によっては譲渡所得はゼロになるケースもあります。現物出資の場合でも同じように譲渡損益で計算されます。
さらに、これらの手続きは法人を設立する過程で、父親と母親、子どもも納得ずくで進めていくことになります。実際に相続の状況になっても、円滑な相続になることはいうまでもありません。円滑な相続と節税――この2つを実現してくれるのが、プライベートカンパニー設立のメリットというわけです。
個人所有のままの相続は無理になりつつある
こうした方法は、昔から行われていたオーソドックスな節税法ですが、最近は税務署も相続税対策を封じる手段をいろいろ考えてきます。特に、相続財産を個人所有のまま相続させることには無理がある時代になりつつあります。
かといって、法人設立という方法もひとりでやるには難易度が高いだけに、きちんとした準備期間を使って実行しないと失敗する可能性もあります。
詳細は後述しますが、相続開始前3年以内に法人に譲渡した物件は、相続税評価ではなく取得価格を使った純資産価額方式で計算されてしまうのも、そうした相続税対策封じのひとつといってよいでしょう。つまりは、税理士に相談して早めに行動を起こすことが重要になってくるということです。