今回は、一度融資を謝絶された銀行に「借りてください」と言わせた事例を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

雨が降れば、銀行は傘を取り上げる?

心理学の世界では、「自分が変われば、相手も変わる」と言います。同様に、企業の場合は、「財務が変われば、銀行も変わる」なのです。

 

東日本大震災の直後、東北のある企業のこと。売上が一気に下降しました。「この先、どうなるのだろうか・・・」資金繰りに不安を感じた経営者は、取引銀行の担当者に、申し出ました。

 

「3000万円ほど、お借りできませんでしょうか?」

 

売上がダウンしても、借入返済に人件費や経費など、当面の支出は発生します。不安になるのもムリはありません。しかし、その銀行担当者の返答は・・・、

 

「申し訳ありません。御社にお貸しすることはできません」

 

と、いうものでした。

 

雨が降れば傘を取り上げる、とはこのことです。業績の悪化は目に見えている、と、銀行は判断したのでしょう。

 

その銀行からは、すでに融資を受けています。借りているから貸してくれる、なんていうのはウソです。その銀行にとっては少額であろう、3000万円であっても貸さないのですよ。

銀行がお金を借りて欲しいのは財務状況の良い会社

ところが、です。復興需要の後押しにより、業績は急回復しました。回復どころか、過去最高の経常利益です。もちろん、経営努力のたまものです。加えて、一気に財務改善を行いました。震災前よりも、ずっと強い財務体質になったのです。

 

そしてこの3月、その銀行担当者が来ました。

 

「少しの間で構いません。3000万円ほど、借りていただけませんでしょうか?」

 

経営者の心の中は、「きたきたきた、仕返しの時がきた!」という気持ちでいっぱいだったそうです。

 

「う~ん、そうは言われましてもねぇ・・・、 今は必要ありませんからねぇ・・・、 お借りすることはできませんねぇ・・・」

 

と、やんわり、ネチネチと、お断りしたそうです。

 

結局、銀行が「貸すか」「貸さないか」は、財務状況次第、なのです。特に、年度末の3月には、財務状況の良い企業に、借りて欲しいのです。ならば、銀行借入れ時のために、財務体質を強くしておけばよいのです。

 

そのためには、現状の財務状況を面積グラフにし、何を削ってどう強くするのか、常に頭に描いておいてほしいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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