(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の申告を終えた後も、家族には次の相続への備えが欠かせません。父親を亡くした拓実さん(35歳男性)は、同居する母親の将来を考え、生前対策について相談に訪れました。父親が残した不動産を守りつつ、二次相続や遺産分割の不安を減らしたいという思いから、具体的な対策に乗り出そうとしています。今回は、拓実さんの事例をもとに、二次相続対策や不動産活用についてのポイントを、相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

これからの対策のイメージ

母親が元気なうちに建て替えておくことが対策にもなり、安心だとアドバイスし、これからそうした建築プランと節税効果を提案していくことになります。プランのイメージはつぎのようになります。

 

建て替えプラン(3階建て・相続税対策含む)

 現状のポイント

  • 土地面積:100坪(約330㎡)
  • 土地評価額:7,000万円
  • 建蔽率:50%(建築可能面積:最大165㎡)
  • 容積率:100%(延べ床面積:最大330㎡)
  • 現在の建物:2DK×10戸(家賃10万円/戸)
  • 年間家賃収入:1,200万円

 

新築プラン(3階建て)
プラン①:1LDK・2LDK中心の高収益型

<建物概要>
・構造:鉄骨造 or 木造(軽量鉄骨)
・階数:3階建て
・延べ床面積:約330㎡
・間取り:1LDK(45㎡)×6戸+2LDK(55㎡)×3戸(計9戸)
・駐車場:数台確保

想定家賃収入:
・1LDK(45㎡):12万円 × 6戸 = 72万円/月
・2LDK(55㎡):15万円 × 3戸 = 45万円/月
・合計:月117万円(年間1,404万円)

 

建築費と融資:
・建築費:1.5億円(目安:50万円/㎡)
・借入:フルローン or 70%借入(1億円)
・利回り:約6.5%

メリット:
・家賃収入が増加(現状1,200万円→1,404万円)
・1LDKと2LDKのバランスで、幅広い入居者層を確保
・相続税対策(貸家建付地評価の適用)

 

デメリット:
・現状より戸数が減る(10戸→9戸)
・駐車場スペースの確保が難しい

 

プラン:コンパクト1K1LDKの高稼働型
<建物概要>
・構造:軽量鉄骨 or 木造
・階数:3階建て
・間取り:1K(25㎡)×6戸 + 1LDK(40㎡)×6戸(計12戸)
・駐車場:最小限

 

想定家賃収入:
・1K(25㎡):8万円 × 6戸 = 48万円/月
・1LDK(40㎡):11万円 × 6戸 = 66万円/月
・合計:月114万円(年間1,368万円)

建築費と融資
・建築費:1.2億円(目安:40万円/㎡)
・借入:70%(約8,000万円)
・利回り:約7%

 

 メリット:
・総戸数が増える(10戸→12戸)
・単身者・夫婦向けで高稼働率
・建築費が抑えられ、利回りが高い

 

デメリット
・家賃単価がやや低め
・ファミリー層の入居は期待できない

 

 相続税対策と経営戦略

1.建物の評価額を増やし、土地の評価額を圧縮
・土地の貸家建付地評価により、土地評価額を3~4割減額可能
・建物は固定資産税評価が相続税評価となり、税負担軽減


2.借入を活用し、課税財産を減らす
・7,000万円~1億円の借入で、相続税の対象となる資産を圧縮
・返済は家賃収入でカバー

 

3.法人化も検討(相続対策)
・法人所有にすると、相続税評価の圧縮+家族間で株式移転が可能
・所得分散による節税効果

 

まとめ

家賃単価を高めたいならプラン①、総戸数と利回りを重視するならプラン②が有力です。
 

 その後、拓実さんからメールが届きました。「母親も喜んでいて、これまで何も進まなかったので今回、何歩も前進できてうれしい。僕もやっとぐっすり眠れそうです」とのことでした。これから具体的な相続プランのご提案をしていくのですが、長いお付き合いになりそうです。

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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