父親が亡くなった。相続税の申告は終わったものの…
拓実さん(35歳男性)が母親の生前対策のことで相談に来られました。母親は60代。相続はまだ発生していないが、将来のことで相談したいといいます。
拓実さんの父親は3年前にガンを発症し、半年ほどの闘病の後に亡くなったといいます。72歳でした。相続人は母親と拓実さんと弟の3人で基礎控除は4,800万円です。
父親は長男で、土地持ちの祖父からいくつかの土地を相続しています。自宅と隣接する駐車場、向かいの賃貸マンションなどです。同居する母親が小規模宅地等の特例を生かすと父親の財産は1億5,000万円程度になりました。父親は急な病だったこともあり、遺言書もなかったのですが、普段から「お母さんを頼む」と言っていましたし、まだ60代という母親の年齢からすると老後のことが不安にならないよう、拓実さんと弟はなにも相続しないとして、母親が全部相続し、納税はしなくてもよかったのでした。
専業主婦の母親は父親任せで何もわからない
父親の3回忌が終わり、ひと段落というところですが、拓実さんは母親の二次相続対策が気になり始めました。父親のときは同居する母親の小規模宅地等の特例と配偶者の特例があり、相続税の負担はなかったのですが、次はそういうわけにはいきません。
拓実さんは二次相続対策のためには、現状のままでは相続税が減らないと思い、母親に借入をして賃貸不動産を購入してもらおうと考えたといいます。
いろいろ探した結果、駅に近いマンションでオーナーチェンジの物件が見つかり、母親に勧めて決断してもらったといいます。母親は賃貸事業も父親任せで、何もわからないといいつつ、拓実さんがサポートすることで決断されたようです。
築35年の賃貸マンションをどうする?
母親が相続した賃貸マンションは、父親が節税対策として建てた築35年の建物です。軽量鉄骨造のためまだ耐用年数には余裕がありますが、平成初期に建てられたもので、間取りは和室2部屋とダイニングという今では少し古いスタイルです。
今後、空室が出るたびに洋室へリフォームする必要がありますが、そのたびにかなりのリフォーム費用がかかるため、不安要素となっています。現在は満室で稼働しているものの、いつ空室が出てもおかしくない状況であり、これもまた心配の種となっています。最近は拓実さんの夢にまで「例のマンション」が亡くなった父と一緒に出てくる始末。毎晩うなされているといいます。
売却してしまうのが最も簡単な方法の一つですが、代々守り続けてきた土地であり、祖父や父親が大切にしてきた思いもあるため、母親としては自分の代で手放したくないと考えています。
今後の課題はこの「例のマンション」をどうするか? ということがポイントだとわかりました。
分け方はどうする?
母親が亡くなったときの相続人は、拓実さんと弟の2人ですが、弟は仕事の関係で地方都市に住んでおり、戻ってくることはないそうです。不動産ではなく現金で相続したいと希望しています。一時は賃貸マンションも売ってはどうか? という意見が弟から出たと言いますが、拓実さんは母の意向を大事にしたいと考え、何とか残す方向で弟を説得しました。
そして、「精算課税制度を使い、今のうちに不動産を私に贈与して現金を作り、将来、弟に渡したほうが良いのか?」とのことでした。
母親は賃貸業で個人事業主として、結構な所得税を払っているが、法人にしても、トントンくらいでメリットもなさそうで、これもどうすればいいか? 二次相続対策、不動産の活用方法、生前贈与、それを踏まえて相続後にも、自分と弟が争ったりしないような遺産分割の仕方、遺言の作成についても知りたいとのことです。
今までの税理士はできない
父親が亡くなったとき、祖父の代から確定申告を依頼している税理士に相続税の申告を依頼したのですが、相続はできないと断られました。その税理士が相続のアドバイスをしてもらうという税理士法人が引き受けてくれることになり、相続税の申告は何とか終えることができています。
その後も確定申告は今までの税理士に依頼していますので、母親の二次相続対策をアドバイスしてもらいたいと相談してみましたが、できないという返事。
仕方なく、相続税の申告を担当した税理士法人にも相談してみましたが、やはりできないという返事でした。主に賃貸マンションをどうしようという相談には対応できないということのようです。
その後も拓実さんは、税理士や銀行などを探して相談に行ったが、どこも二次相続対策の提案をしてくれるところはなかったといいます。
