親の相続を見据えた対策は、早めに取り組むことで大きな安心につながります。特に自宅や金融資産を持つ場合、相続税の負担や手続きに備えることが重要です。今回は母親の財産をどう守り、次世代に引き継ぐか悩む富美子さん(65歳)の相談事例をもとに、相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が相続対策のポイントをわかりやすく解説します。
親に自宅と現金があり、相続税がかかりそう
富美子さん(65歳)が母親(80代)の相続対策をしたいと相談に来られました。父親はすでに亡くなり、富美子さんの他にきょうだいはいません。相続人はひとりですので、もめる要素はありませんが、相続税の基礎控除は1人分の3,600万円しかありません。
母親が亡くなったときの相続税は富美子さんが払うことになるため、今から困ることがないようにしておきたいと、本を読んだり、ネット情報を調べたりしているということです。富美子さんは一人っ子で若い頃からなんでも自分でやってきました。今回も、「私が動けるうちにやらないとダメなんです」と話していたのが印象的でした。
母親の財産
母親の財産は父親から相続した戸建ての自宅があり、評価は約4,000万円とわかりました。母親の自宅だけでも相続税の対象だということです。富美子さんは同居をしていないうえに夫名義の自宅があるため、小規模宅地等の特例は使えません。
さらに預金と株があり、あわせて5,000万円ほどだといいます。母親の財産は約9,000万円となり、相続税は920万円だと計算できました。
節税対策にはどんな不動産がいいのか?
富美子さんの質問は、節税対策を勉強すると不動産にするのがよいとわかったが、どんな種類の不動産にすればいいのかわからないのでアドバイスをもらいたいということでした。
タワーマンションの最上階と一番下の階では、最上階の方が節税効果が大きいと数年前までは言っていたので知っているし、土地だけでいいのか? 新築戸建てがいいのか? 築年数の経った戸建てなのか? 新築マンションなのか? 古いマンションでもいいのか? など、混乱しているというのです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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