コメ高騰で物価上昇予想、さらに加速
内閣府「消費者マインドアンケート調査」の暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は、調査開始の16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でした。しかし、21年9月から25年4月までの最近の3年8ヵ月間はマイナス0.68と逆相関になっています。現状は、高い物価見通しが暮らし向き判断の足枷になる状況が継続しています。
物価上昇判断DIは、調査開始の16年9月から22年1月までは60台・70台で安定推移していました。ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見通しが強まりました。
22年10月に90.4をつけたあと80台後半の高水準での推移が続き23年は6月の90.7をつけました。そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下しましたが、反転上昇傾向に。25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録しました。25年3月に86.8に低下したものの、4月は87.9に上昇し、統計史上10番目の高水準になりました。
全国消費者物価指数3月、生鮮食品除く総合は3.2%に上昇
25年3月全国消費者物価指数で、日銀の物価目標である生鮮食品を除く総合・前年同月比は+3.2%と2月の+3.0%から上昇。一方、実質賃金の計算に使用される、持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+4.2%と2月の+4.3%から鈍化しました。
「米類」の前年同月比は+92.1%と2月+80.9%から伸び率が高まりました。24年10月に+58.9%になり過去最大だった75年9月の+49.5%を更新したあと6ヵ月連続で過去最大を更新しました。24年の全国消費者物価指数「米類」は2年連続前年比上昇ですが、23年の+3.8%から24年は+27.7%と上昇率が大幅に高まりました。
一方、「生鮮食品」は25年1月+21.9%、2月の+18.8%から3月は+13.9%と、まだ2ケタの上昇率ながら鈍化してきました。「生鮮食品」の前年比は22年+8.1%、23年+7.4%、24年+7.0%と3年連続でプラスの伸び率で、「生鮮食品除く総合」の伸び率を上回っていました。
なお、25年4月上旬の主要青果物卸売市場の野菜・果実卸値平均の前年比がマイナスに転じ、4月も鈍化が予想されます。これは、日銀が金融政策の目途とする、「生鮮食品を除く総合」の前年同月比には影響しませんが、実質賃金などを計算するときに使用する、「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比鈍化に結び付きます。
高止まりする物価が家計を圧迫…暮らし向き判断DI、過去5番目の低水準に
暮らし向き判断DIは、24年10月から25年4月の7ヵ月間は、物価上昇判断DIが84以上の高水準に上昇したことから、低水準の20台・30台になりました。24年9月の41.0を直近の極大点として、振幅を伴いつつももたついた動きになっています。25年4月は25.4で3月の26.5から低下しました。25年4月の暮らし向き判断DIは、コロナ禍での20年4月20.7、20年3月21.0、20年5月21.5と、直近では23年11月22.5に次ぐ、過去5番目に低い数字になりました。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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