異常気象で食料品高騰続く、コメは5ヵ月連続で過去最大更新
全国消費者物価指数は22年から24年まで3年連続で「食料」と食料の中の「生鮮食品」の前年比がプラスの伸び率に。「総合」「生鮮食品除く総合」の伸び率を上回りました。異常気象の影響もあり、代わる代わる何某かの食品が高騰する状況。天候要因は一時的な要因ではなく3年連続の高騰です。
24年では「米類」が2年連続前年比上昇で、23年の+3.8%から24年は+27.7%と伸び率が大幅に高まりました。全国消費者物価指数25年2月の「米類」は前年同月比+80.9%です。「米類」は需給の引き締まりや生産コストの上乗せが続き、24年10月に+58.9%になり過去最大だった75年9月の+49.5%を更新したあと、5ヵ月連続で過去最大を更新しています。
高騰するコメ価格を安定させるため、新米が出回る前の7月ごろまで毎月、備蓄米を放出することを決めたことを、4月9日に江藤農相が発表しました。毎月放出することで、コメ不足の不安を払拭し高止まりする価格を抑えることができるか注目です。
野菜、果実の卸値は落ち着いてきたか
農林水産省の「青果物卸売市場調査(旬別結果)主要卸売市場計」の直近データである25年3月下旬分で、野菜総計の1kgあたり卸売価格は295円、前年同旬比0.0%になりました。24年11月上旬から25年3月中旬まで続いた前年同旬比2ケタ上昇が大きく変化しました。
果実総計の卸売価格は24年12月上旬から25年3月上旬まで前年同旬比2ケタ上昇が続きましたが、25年3月中旬分で+2.4%と1ケタに鈍化しました。直近データである25年3月下旬分で、果実総計の1kgあたり卸売価格は606円、前年同旬比∔1.7%になりました。
気象庁の今夏の天候見通し
気象庁が2月25日に発表した今年の暖候期予報では、夏(6月~8月)の平均気温は、北・西日本で高い確率60%、東日本で高い確率70%、沖縄・奄美で高い確率50%です。
地球温暖化の影響等により、全球で大気全体の温度が高く、暖かい空気に覆われやすいため、気温は全国的に高いという予報です。
一方、4月10日に気象庁「エルニーニョ監視速報 2025年3月の実況と2025年4月~2025年10月の見通し」が発表されました。それによると、「エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態となっている。今後、夏にかけて平常の状態が続く可能性が高い(60%)」となっている。
冷夏になりやすいといわれるエルニーニョ現象も、猛暑になりやすいラニーニャ現象も発生せず平常の状態になる確率が高いことで、今夏では、生鮮野菜などの価格が比較的落ち着いた動きになる可能性が大きくなることを期待したいところです。
トランプ関税でWTI10ドル超下落、日本の原油価格も下落傾向
WTI※の4月2日終値は1バレル=71.71ドルでしたが、トランプ米国大統領の相互関税を公表したホワイトハウスでの演説を受け、世界景気の悪化懸念から急落。4月11日の終値は61.50ドルになりました。
※米国テキサス州やニューメキシコ州で産出される原油のことで、原油価格の代表的な指標のひとつ
日本の貿易統計の入着原油価格の前年同月比は、25年2月は7万8,189円/klで前年同月比∔0.4%の上昇。直近データの3月上中旬では7万5,465円/klと、昨年速報値と比較した前年同旬比は▲4.0%の下落になっています。3月上旬は7万5,759円/kl、前年同旬比は▲3.4%の下落、3月中旬は7万5,242円/kl、前年同旬比は▲4.5%の下落でした。
4月以降8月まで今年の春・夏の入着原油価格が、仮に2月中旬と同じ水準にとどまるとすると、前年同月比はマイナスになる見込みです。最近のWTIの低下と、ドル円レートの動向をみても、入着原油価格は、今夏の物価の安定要因になると期待されます。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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