物価上昇判断DI、4カ月ぶり低下の理由は?
消費者マインドアンケート調査は5段階の評価の回答なので、景気ウォッチャー調査と同じ手法で物価上昇判断DIをつくることができます。物価上昇判断DIは、調査開始の16年9月から22年1月までは60台・70台で安定推移していましたが、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見方が強い状況が継続しています。
22年10月に90.4をつけたあと80台後半での推移、23年6月に90.7をつけ、そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下したあと反転上昇し、25年2月に90.2と20カ月ぶりの90台を記録しました。その後25年3月以降26年3月まで80台で推移しました。25年2月の90.2からの振幅を伴いつつ緩やかながらの下降傾向でした。
26年2月は82.1と25年11月に並ぶ低水準でした。2月末からの中東情勢緊迫化で4月は91.3とこの時点での史上最高水準まで上昇、5月は92.8とさらに最高水準を更新しました。しかし、6月は87.1で4カ月ぶりに低下。中東情勢の緊迫状況が幾分和らいだことや、昨年高騰していたコメ価格が落ち着いてきたことなどから、2月以来の水準に戻りました。
回答の内訳比率をみると、26年2月は「上昇する」が47.1%と2カ月連続で低下していましたが、26年3月では「上昇する」が60.4%と反転し、4月67.9%、5月72.4%へと上昇、初の70台になりました。しかし、6月は57.8%に低下しました。また、3月~5月は低下方向の選択をした人がいませんでしたが、6月は「やや低下する」が3.1%になりました。
※一番右の欄の数字は、上が景気ウォッチャー調査と同様に加重平均して求めたDI。同じ欄の下の数字は、「上昇する」と「やや上昇する」の割合の単純合計。
2026年のWTI原油価格、短期間で大きな変動
2026年のWTI原油価格は、短期間で大きな変動を見せてきました。6月半ばには、米国とイランの暫定和平合意により原油価格は3月初め以来の70ドル/バレル台まで低下しました。6月の物価上昇判断DIにはこの変化が織り込まれている感があります。
WTIの6月22日終値は74.82ドル/バレルで、3月4日以来、約3カ月半ぶりの安値を付けました。米国とイランの協議進展などで供給不安が後退したことから売り注文が優勢となったためです。但し、ホルムズ海峡の交通量は徐々に回復しつつあるものの、正常化にはなお時間がかかるとの見方も根強くあります。
暮らし向き判断DI、中東情勢緊迫化の影響で低下するも…
暮らし向き判断DIは、2026年1月は24年9月41.0以来16カ月ぶりの40台に戻り、2月はさらに40.4へと5カ月連続で上昇しました。その後、中東情勢緊迫化の影響で、3月34.5、4月33.6、5月29.9と3カ月連続で低下し、25年5月28.0以来12カ月ぶりの低い水準になりました。しかし、26年6月は36.3に戻りました。36.3は16年9月~26年6月の全期間平均値の36.4に極めて近い水準です。
暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIは「逆相関」の関係に
消費者マインドアンケート調査の暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でしたが、21年9月から26年5月までの最近の4年10カ月間では▲0.64229のマイナスで逆相関の関係があります。26年6月では中東情勢への懸念幾分和らぎ、26年6月の暮らし向き判断DIは4カ月ぶりの上昇、物価上昇判断DIは4カ月ぶりの低下となりました。
なお、将来的に日銀が目指す物価目標である消費者物価指数前年比+2%が安定的に実現した場合、物価上昇判断DIは全員が「やや上昇」を選択するときの75.0程度になることが期待されます。
スーパーのコメの平均価格の前年同週比は?
スーパーでのコメ価格の平均価格は、25年6⽉以降、随意契約による政府備蓄⽶の流通で低下した後、新⽶の出回り等を背景に上昇し9⽉以降は4,000円/5kgを上回る水準で推移しましたが、3月9日~15日の週で5キロの平均価格が3,980円/5kgと28週ぶりに4,000円台を割り込みました。6⽉8⽇~14日の週で平均価格は3,588円/5Kgまで低下しました。14週連続で5キロの平均価格が3,000円台です。
スーパーでのコメ価格の平均価格の前年同週比は、3月2日~8日の週で▲1.6%と前年比マイナスになりましたが、その後、6⽉8~14日の週の▲8.5%まで15週連続でマイナスになっています。
高騰するコーヒー豆、前年同月比は25年9月をピークに鈍化傾向
世界最大のコーヒー生産国であるブラジルが、2024年に深刻な干ばつに見舞われたことなど様々な要因で高騰しているコーヒー豆ですが、全国消費者物価指数は26年3月の261.8をピークに、5月は247.2まで2カ月連続で低下しました。前年同月比は25年9月の+64.1%をピークに鈍化傾向にあり、26年5月は+37.9%になりました。また、全国消費者物価指数での米類・前年同月比は5月▲4.9%下落と、昨年歴史的な高騰が続いた米類が遂に22年11月以来42カ月ぶりの下落に転じました。
26年の飲食料品値上げ、5年連続1万品目を突破する見込み
26年1月~5月の全国消費者物価指数の食料の前年同月比は+3.5%~+4.0%のレンジ内で推移していて、5月は4月と同じ+3.5%になっています。帝国データバンクの2026年6月「食品主要195社」価格改定動向調査によると、26年通年の値上げ品目総数は、1~10月までの判明分で9361品目となったということです。26年の飲食料品値上げは5年連続1万品目を突破する見込みで「中東情勢」由来が2割に達するということです。中東情勢の悪化を背景に、飲食料品では今夏以降に広範囲な値上げラッシュが続くと予測しています。
3月19日から開始した「ガソリン補助金」の効果は?
ガソリン税の暫定税率が2025年末に廃止されたことから、26年に入ってのレギュラーガソリンの全国平均価格は前年比で2ケタのマイナスが続いていました。しかし、一時的に、3月16日時点では190.8円/lで過去最高を更新し、前年比は+3.4%と一時的にプラスに転じました。
政府は中東情勢に伴う価格上昇を受け、3月19日からガソリンの補助金を開始しました。レギュラーガソリンの店頭価格を1リットルあたり170円/l程度に抑えるようにしているので、前年比はマイナスに転じ、直近の6月15日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は、169.7円/lで、前年比▲0.9%となりました。前年比は3月23日の調査から12回連続でマイナスになりました。
25年6月23日の週から11月10日の週までの店頭価格を1リットルあたり172円/l台以上だったことからみて、補助金で171円/l台以下に抑えられるなら、当面、前年比はマイナスで推移する見込みです。
毎月勤労統計調査・4月速報値によると、実質賃金は前年同月比+1.9%。政府のガソリン補助金などが物価の伸びを抑えプラスの伸び率は4カ月連続になりました。春闘での賃上げ率の波及や最低賃金の引き上げを映して名目賃金を示す現金給与総額・4月速報値は前年同月比+3.5%です。3カ月連続で+3%以上となるのは1992年3月以来、34年1カ月ぶりです。
6月のESPフォーキャスト調査の平均予測値をみると、26年年間平均のWTI価格は86.59ドル/バレル。消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)前年同期比は26年4~6月期+1.69%、7~9月期+2.08%、10~12月期+2.55%、27年1~3月期+2.94%、4~6月期+2.30%である。何とか実質賃金と個人消費の好循環がもたらされることを期待したい局面です。
中東情勢緊迫化で、原油・粗油の輸入価格急騰
中東情勢緊迫化から貿易統計・原油及び粗油の輸入価格が急騰しました。3月までは6万円/kl台でしたが、4月上旬83,257円/kl、4月中旬94,961円/klと急激に上昇し、4月下旬には130,546円/klの最高値を記録しました。その後、5月上旬117,409円/kl、5月中旬106,684円/kl、5月下旬118,444円/klと10万~11万円/kl台で推移しています。
貿易統計からみた原油・粗油の地域別の輸入動向は?
貿易統計で原油及び粗油の地域別の輸入動向を、直近の5月速報値と25年度で比較してみると、中東からの輸入シェアが83.9%と25年度の93.1%から10ポイント程度低下し、代わりに代替調達で他地域からが増えています。最も増えたのが米国で12.2%と7.4ポイント、シェアを拡大しました。5月速報値の中東からの価格は11.2万円/klですが、米国からの価格は12.2万円/klと9%程度高めになっています。
2026年の原油及び粗油の輸入の数量、金額、単価の前年同旬比の推移をグラフ化してみました。数量の前年同旬比は4月中旬に▲92%程度と激減した後、5月下旬には▲37%程度までマイナス幅が縮小しました。6月11日の中東情勢に関する関係閣僚会議資料によれば、5月の原油調達率が約65%ですが、それに見合う数量の前年同月比と思われます。なお、原油調達率は6月約8割、7月約10割となっていますので、目先、数量の前年同月比のマイナスは縮小していくものと思われます。
一方、単価の前年同旬比は4月下旬に+83%程度まで急騰した後、5月は上旬+70%程度、中旬+57%程度、下旬+76%と高い上昇率で推移しています。しかし、単価の前年同旬比は、目先鈍化が見込まれます。5月月間平均のWTI原油価格は98ドル/バレルでしたが6月は22日までの平均で86ドル/バレルになっています。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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