消えゆくホームレス、10分の1に激減…東京23区では異変も【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2025年5月5日)

消えゆくホームレス、10分の1に激減…東京23区では異変も【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

2003年に厚生労働省によるホームレスの実態に関する全国調査・第1回が行われてから22年。日本におけるホームレスの数は減り、2025の調査では10分の1にまで減少しました。本稿では、景気の予告信号灯としての身近なデータとして2025年1月の「ホームレスの実態に関する全国調査」を取り上げます。エコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきましょう。

減り続けるホームレス数は2003年から10分の1に

厚生労働省が集計した「ホームレスの実態に関する全国調査」、第1回03年がピークで全国のホームレスは2万5,296人。22年後の25年は10分の1まで減少。

 

全国の市区町村が巡回による目視でホームレスの人数を調べ、厚生労働省が集計した「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、全国のホームレスは25年1月時点で2,591人でした(能登半島地震で被災した石川県珠洲市や能登町など石川県の7市町は含まず。その場にいなかった人などは含まず)。03年に厚生労働省が初めてこの調査を実施して以降、生活支援事業の効果もあり減少傾向で推移しています。

 

2,591人の内訳は、男性2,346人、女性163人。性別不明とされた人は82人でした。都道府県別で最も多いのは大阪府の763人で、ついで東京都の565人、神奈川県の366人でした。

 

最初の「ホームレスの実態に関する全国調査」は03年に実施したものです。当時のホームレスは2万5,296人。最初の調査から4年後の07年に2回目が実施され、以後毎年1月に実施されています。自治体の自立支援策の効果もあり、07年では4年前から6,732人減の18,564人と約27%減少しました。

 

その後、リーマンショックの影響で09年までの減少テンポは鈍った感じがありましたが、10年以降は景気の持ち直しもあり、順調に25年まで減少。最初の調査から22年後の25年には10分の1まで減少してきました。

 

※毎年1月に調査 (出所)厚生労働省
[図表1]全国のホームレス数の推移※毎年1月に調査
(出所)厚生労働省

ホームレスの2割は東京23区、6割は政令指定都市で生活

ホームレスの多くが暮らすのは大都市。東京23区と政令指定都市合計で80%。

 

25年1月「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、全国のホームレスのなかで、東京23区(国管理河川(国土交通省調査)を含む)が20.1%、政令指定都市が59.9%で両者を合計した割合は80%になります。このようにホームレスの多くは大都市で生活しています。

 

(出所)厚生労働省
[図表2]2025年1月全国のホームレス分布状況(出所)厚生労働省

 

25年の調査でホームレスが確認された起居場所の割合は「都市公園」25.5%、「河川」21.6%、「道路」24.1%、「駅舎」5.8%、「その他施設」22.9%で、24年の「都市公園」25.2%、「河川」22.6%、「道路」23.8%、「駅舎」6.2%、「その他施設」22.2%、からは大きな変化はみられませんでした。

 

ただし、少し長めに3年前の22年の「都市公園」24.6%、「河川」24.0%、「道路」21.3%、「駅舎」5.7%、「その他施設」24.3%と、25年を比べてみると、すべての起居場所で実数は減少していますが、減少ペースが違うため割合でみると、「都市公園」、「道路」、「駅舎」で増加、「河川」、「その他施設」で減少になりました。

 

(出所)厚生労働省
[図表3]起居場所別のホームレス数 (出所)厚生労働省

夏から冬にかけてのホームレス増加が観測される

25年1月の東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレス数は347人、ピークの6%に減少。ただし、24年8月から5人増加。夏季から冬期にかけての増加は99年以来2回目なので少し気懸かり。

 

古くから東京23区のホームレスのデータがある東京都福祉局(2023年6月までは福祉保健局)によるこの目視の調査が「路上生活者概数調査」です。年に2回、冬期・1月(07年までは2月)と夏期・8月に行われています。

 

最新の調査で確認した25年1月時点での都の路上生活者数は、565人でした。このうち、都・区市町村等の調査による人数は362人(区347人、市町村15人)、国土交通省の調査による国管理河川の人数は、203人(区173人、市町村30人)でした。24年8月の調査結果と比べると、合計で23人の減少となりました。同じ冬期調査の24年1月の調査結果と比べると、合計で59人の減少です。

 

東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレスのデータで長期的な推移をみると、バブル景気崩壊により最初の調査である95年から過去最高の99年8月の5,798人まで増加しました。

 

その後04年8月まで5,000人台の高水準で推移したあとで減少に転じ、25年1月は347人でピークの約6%まで低下。24年1月の372人から25人減少しました。かつて5%台の高水準だった完全失業率が、現在2%台なかばまで低下していることに示唆されている雇用環境の改善が、近年のホームレスの減少につながっていると思われます。

 

ただし、東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレスに限ってですが、前回調査24年8月の342人からは5人増加しています。前回調査からの増加は冬から夏にかけての期間でみてみると、最近23年の1人増加をはじめ過去14回あります。しかし、夏季から冬期にかけての増加は1999年に続き2回目と異例のことなので、少し気懸かりです。

 

目視による調査で概数。国管理河川(国土交通省調査)を除く。 (出所)東京都
[図表4]東京23区内のホームレス数の推移 目視による調査で概数。国管理河川(国土交通省調査)を除く。
(出所)東京都

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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