「安い物価」と「高い観光競争力」
米コンサルティング会社マーサーの「2024年世界生計費調査-都市ランキング」によると、日本の主要都市は、東京(2023年19位→2024年49位)、大阪(同93位→146位)、横浜(同115位→154位)、名古屋(同113位→161位)と、いずれの都市も順位を落とした(図表5)。
円安や相対的に緩やかなインフレを背景に、日本は「物価の安い国、ニッポン」との評価が進んでいる。また、世界経済フォーラムが2024年5月に公表した「旅行・観光開発指数」によると、日本の観光競争力は米国、スペインに次ぐ第3位となっている。項目別では、「文化資源」や「地上輸送・港湾インフラ」、「健康と衛生」、「安心・安全」などが高い評価を受けている(図表6)。
このように、世界の中で「安い物価」と「高い観光競争力」を有する日本は、「コスパ重視」の旅行トレンドと相まって、引き続き旅行先に選ばれる可能性が高い。
JTBによると2025年の訪日外客数は前年比+8.9%増加し、世界の伸び率(3%~5%)※2を上回る見通しである。実際に、2025年(1~2月)は前年同期比+28%と好調なスタートを切っており、日本のインバウンド市場は昨年に続いて高い成長が期待できそうだ。
※2 Un Tourismによる2025年の予測値。
コスパ向上で魅力増す日本、ただしオーバーツーリズムへの対応は急務
日本の観光資源は豊富で魅力が高く、引き続き世界から注目を集めている。また、近年、海外のホテルオペレーターは日本市場への進出を積極化しており、2025年は複数のハイエンドラグジュアリーブランドが初出店を予定している。政府は「観光立国推進基本計画(第4次)」(2024年3月)のなかで、観光消費額の拡大や質の向上を掲げ、観光市場を成長産業の1つに位置付けている。
もっとも、2024年のインバウンド市場の伸びは、円安から相対的に日本のサービスが安くなり、訪日客が増加したことによる影響も大きい。日本は上述の「旅行・観光開発指数」が示す通り、「持続可能な観光」の評価が低く、客数増に対するオーバーツーリズムへの対応は急務であろう※3。観光インフラの整備や地域経済の活性化に期待が高まる一方、一部の地域社会では急成長がもたらす歪みや負担が限界に達しつつある。住民生活の尊重と訪日客に対するサービスの質向上の両立に向け、抜本的な対策について引き続き議論を深める必要がありそうだ。
※3 解決策の一つとして、観光客の負担引き上げが挙げられる。2026年3月から姫路城の入場料は市民1,000円、市民以外2,500円に設定。また、2025年から富士山登山の主要4ルートで通行料4,000円の徴収が始まる予定である。
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