公的年金、70歳受給開始なら「毎月の受取額42%マシマシ」だが…増額だけが目的ではない、公的年金を繰下げ受給すべき「本当に大切な理由」【経済評論家が助言】

公的年金、70歳受給開始なら「毎月の受取額42%マシマシ」だが…増額だけが目的ではない、公的年金を繰下げ受給すべき「本当に大切な理由」【経済評論家が助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「自分の老後、年金は足りるのだろうか?」そんな心配をしている人は多いでしょう。有力な対策のひとつに公的年金の受取開始時期を繰り下げる方法がありますが、毎月の受取額を増やせることだけではない、もっと大きな理由も考えられます。経済評論家の塚崎公義氏が提案します。

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老後資金、投資で増やそうとするのは「リスク」が…

「老後資金が不足しそうだから、投資で増やそう」と考えている人も多いようですが、投資で増やそうとすればリスクを覚悟する必要があります。ただでさえ不足しているのに投資に失敗してしまうと悲惨な老後になりかねません。

 

そこで筆者は、増やそうとするのではなく「預金はインフレに弱いリスク資産だから、資産の一部を株や外貨に振り分けたほうが安心だ」というスタンスの投資がよいと考えています。

 

老後資金が足りないならば、投資を考えるよりも「働いて稼ぐ」「生活を見直す」が重要ですが、これらについては別の機会に詳述しましょう。前回の拙稿『日本国民、インフレリスク・長生きリスクに戦々恐々…老後生活の頼みの綱「公的年金」、どこまで頼れるか?』では「公的年金が老後資金で最重要だから年金を大切にしよう」という話をしました。金額的にも老後資金の最重要な柱のひとつですし、老後資金の最大のリスクである「長生きしている間にインフレが来て老後資金が枯渇してしまう」可能性に対しても大変心強い味方となってくれるからです。

 

その際、具体策として「自営業者等は、年金保険料をしっかり払おう」「サラリーマンは定年退職後も働いて年金保険料を払おう」「専業主婦も働いて、厚生年金に加入しよう」「年金の受取開始時期を遅らせて、毎月の受取額を増やそう」といったことを心がけるとよい、と記しました。そこで本稿では、年金の受取開始時期について考えていきましょう。

老後の年金は「繰下げ受給」で充実させよう

年金は、65歳から受け取るのが原則ですが、じつは60歳から75歳までの間で受取開始時期を選べるのです。当然ですが、早くから受け取れば毎月の受取額は少なくなりますし、遅くに受取開始時期をずらせば毎月の受取額は多くなります。

 

5年間待って70歳から受け取り始めると、毎月の受取額が42%増えますので、自営業者夫婦で14万円弱が20万円弱に、標準的なサラリーマン夫婦では23万円強が33万円強に増えることになります。老後の安心感がかなり増しますね。そこで筆者は、65歳になっても年金を受け取らず、現在に至っているわけです。

 

75歳まで待つと毎月の受取額が84%増えますので、75歳まで待てる人は老後が相当安心でしょう。もっとも、相当長生きしないと元が取れないので、とりあえず70歳まで待ってから、さらに待つか否かを健康状態等と相談しながら考えればよいでしょう。

繰下げ受給を選ぶ理由は「保険だから」

65歳時点での平均余命まで生きるとすると、70歳から受け取るほうが65歳から受け取るよりも得になります。計算すればわかりますが、計算しなくても「制度を作ったときには平均寿命まで生きると損得がないように作ったはずで、その後に平均寿命が延びているから待ったほうが得だろう」という想像は可能でしょう。

 

65歳になっても仕事をして収入を得ている場合には、働いて得た収入と年金を合計した収入に対して累進課税されることになりかねないので、70歳あたりで仕事の収入が減ったころに年金が増えるほうがいい、という考え方もあります。

 

もっとも、筆者が年金受取開始時期を遅らせているのは、損得の計算をしたからではありません。公的年金は「長生きしている間にインフレが来て老後資金が枯渇してしまうリスク」に対する最強の保険だからです。

 

「65歳から70歳までに受け取れるはずだった年金の金額を新たに保険料として支払い、70歳から受け取れる年金額を増やしてもらう」という「追加的な保険」に加入しているつもりでいるのです。

 

「早死にしたら損だから、急いで受け取ろう」という人も多いようですが、そういう人でも火災保険には加入している場合が多いようです。火災保険に加入する際に「火事にならなかったら保険料が損だから加入しない」とは考えないのだから、早死にした場合のことだけを考えるのは不思議です。「家が火事で焼ける」と「長生きしている間にインフレが来て老後資金が底を突いてしまう」を並べて考えれば、「保険には加入しておいたほうが安心だ」と思うのですが。

 

火災保険は、保険会社のコストと利益を客が負担しているので、客全体としては損をしているわけです。それでも加入している人が多いのですから、「70歳まで待った人全体としては得をしている」という公的年金の「追加的な保険」の損得勘定も考えてみてはいかがでしょうか。

年の差婚等なら、FP等に有料で相談する価値あり

もっとも、だれでも待つほうが得だ、というわけではありません。病弱で長生きする可能性が小さいと考えている人は、早めに受け取って人生を楽しむほうがいいかもしれません。

 

サラリーマンの専業主婦は「加給年金」が受け取れる場合があるのですが、サラリーマンが厚生年金の受給開始を遅らせてしまうと、配偶者が加給年金を受け取れなくなってしまうので、その場合には「1階部分だけ受給開始を繰り下げて、2階部分は65歳から受け取る」といった選択肢も要検討です。

 

いずれにしても、年金関係は複雑ですので、ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士など、専門家に相談してみるといいかもしれません。相談には若干の費用がかかりますが、それによって多額の損失を被るリスクが低下するならば、安いものではないでしょうか。

 

本稿は以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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