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日本の年金制度は3階建て…1階・2階部分は「公的年金」
日本の年金制度は、3階建てになっています。1階部分と2階部分の2つが「公的年金」です。
★日本の年金制度の構造★
3階部分 = 各自が加入する私的年金
2階部分 = サラリーマン※が加入する厚生年金(公的年金)
※サラリーマン=男女を問わず、公務員等を含む。以下同様
1階部分 = 国民全員が加入する国民年金(公的年金)
3階部分が「私的年金」です。私的年金のなかには、iDeCoという税制上有利な制度もありますが、本稿は公的年金を論じることとし、iDeCoについては別の機会に詳述することにします。
国民年金は、年金保険料の払い漏れがなければだれでも65歳から毎月6万9,000円強が受け取れます。複雑なのは、年金保険料の支払い方法が人によって異なることです。
加入者は、
★サラリーマン
★サラリーマンの専業主婦(主夫)
★それ以外
の、3つに分けられています。
サラリーマンは、給料から厚生年金保険料が天引きされることで、国民年金保険料を払ったものとみなされます。サラリーマンの専業主婦は、配偶者が厚生年金保険料を払ったことで自分も国民年金保険料を払ったものとして扱われます。これは、自営業者の専業主婦等が自分で保険料を払わなければいけないのと比較して不公平だと筆者は考えていますが…。
自営業者、自営業者の専業主婦、失業者、学生、等々は、20歳から60歳まで国民年金保険料を払う必要があります。もちろん、払わなくても刑罰はありませんが、老後に受け取れる年金が減ってしまうので、払えるならばしっかり払いましょう。払えないときは「払えなくてスミマセン」という申請(国民年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」ページ参照)をしましょう。書類1枚出すだけ、最近は電子でも申請ができるようになりました。申請するメリットも大きいので、払えない状況に陥ったときは、面倒だと思わずにぜひ。
サラリーマンは、老後に国民年金(老齢基礎年金と呼ばれます)と厚生年金を両方受け取ることができます。国民年金は原則として全員同額ですが、厚生年金は現役時代に所得の高かった人が多く受け取れるのが原則です。現役時代に多くの保険料を払ったわけですし、所得が高い人は生活も膨らんでいるだろうから、ということなのでしょう。
公的年金は「長生き」「インフレ」に対応する、ありがたい制度
国民年金(老齢基礎年金)は、保険料を40年間しっかり払っていれば、65歳から毎月6万9,000円強受け取れます。夫婦2人で合計14万円弱です。老後の生活に十分とは決していえませんが、大きな柱であることは疑いないでしょう。自営業者は定年がなく、元気な間は働いて稼ぐことができますから、それを含めて老後資金の設計をすることが可能です。
サラリーマンの場合、サラリーマン時代の所得が標準的なものであった場合は、夫婦合計で月額23万円ほど受け取れるようです。これならなんとか生活できそうですね。老後資金があれば、それを取り崩しながらささやかな贅沢を楽しむこともできるでしょう。
公的年金が素晴らしいのは、老後資金を考えるうえでの最大リスク、「長生きをしている間にインフレが来て老後資金が底を突いてしまう」に対する備えとして心強いことです。公的年金はどれだけ長生きしても最後までしっかり支払ってもらえますし、インフレが来て生活費が嵩むようになると、原則としてその分だけ支給額が増えるのです。
もし少子高齢化で年金受給額が減少したら、どうすればいい?
公的年金は、自分で払った年金保険料を自分の老後に受け取るという制度ではありません。現役世代が支払った年金保険料を高齢者が山分けするのが原則です。
したがって、早死にした高齢者が受け取らなかった金額は長生きしている高齢者に支払われますし、インフレになれば現役世代の給料が上がるので、現役世代が支払う年金保険料を引き上げることができ、高齢者に支払う年金額を増額することができるわけです。
一方で、この制度は少子高齢化には弱いという特徴があります。年金保険料を支払う現役世代の人数が減っていく一方で、年金を受け取る高齢者は増えていくからです。
したがって、年金の金額は(インフレ調整後で、すなわち年金生活者の生活レベルは)いまより少しずつ悪化していくと考えられています。もっとも、現役世代の定年が延長されるなどの変化があれば、年金保険料を支払う年数が増えるかもしれません。高齢者の対策としても、長く働いて年金を受け取り始める年齢を遅らせれば、毎月の年金受取額を増やすことが可能ですので、それほど心配することはないでしょう。
公的年金は破綻しない…安心してしっかり頼ろう
「いまの若者は将来年金を受け取れないかもしれない」という人がいますが、年金の専門家のなかには同様の危惧をする人がほとんどいませんので、過度な懸念は不要です。
筆者としては、現役世代の定年が延長されるに従って、現役世代が年金を支払う年数が延びていくだろうと考えていますし、政府も「年金を支払わないと生活保護の申請が増えて財政が一層厳しくなるので、なにを差し置いても年金だけはしっかり払わなければ」と判断せざるを得ない、と考えています。
そこで、個人は老後資金の柱である年金をしっかり頼ることが重要です。そのためには、「自営業者等は、年金保険料をしっかり払おう」「サラリーマンは定年退職後も働いて年金保険料を払おう」「専業主婦も働いて、厚生年金に加入しよう」「年金の受取開始時期を遅らせて、毎月の受取額を増やそう」といったことを心がけるとよいと思います。年金の受給開始時期については、別の機会に詳述します。
本稿は以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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