(※写真はイメージです/PIXTA)

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【Q4】なぜ準備通貨の供給と安全保障は一体不可分なのか?

・なぜなら、米国は巨額の対外借り入れによって、巨額の軍事支出を行い、西側世界の政治および経済の安定に寄与してきたためである(→米国側の言い分)。

 

・たとえば、(1)自由かつ安全に世界の海や空を航行でき(→自由なサービス消費)、また、自由かつ安全に貿易財を移動できるのは(→自由な財消費)、米国による実力行使や、米国が持つ抑止力のおかげである。加えて、たとえば、インターネットの開発やインターネット上での自由かつ安全な取引(→自由なサービス消費)についても米国の技術力や監視のたまものである。

 

・(2)米国以外の諸国の企業は米国への輸出拡大によって、売上と利益、そして雇用を得てきた。その裏側で、米国の製造業は米国から撤退し、米国の雇用は失われてきた。それは、米国の労働者が負担してきたものである。

 

・(3)米国が準備通貨を供給する、その裏側で生じる米国の過大な消費は、一面では準備通貨供給国の特権であるかもしれないが、それはすべて返済が必要な借り入れである。すなわち、米国以外の政府や企業は米国から利息という収益まで取ってきた。それもまた、米国の労働者が負担するものである。

 

・以上の3点をまとめると、現在の準備通貨システムは、「米国に過大消費のための資金を貸し付けることで、収益と雇用と安全保障の3つを得る、一石三鳥の構図」である。

 

・しかし現在、米国は利払い費が軍事費を上回り、公的債務は利払いが利払いを生んで雪だるま式に膨らんでいる。

 

・かかる状況は、世界の自由貿易と安全保障に疑問を投げかける。

 

・システムの構築が必要であろう。おそらくは、米国以外の諸国が自由貿易と安全保障のための負担を拡大する必要があるだろう。

 

・米国以外の諸国は、過去に得た、そして、将来においても得るだろう自由貿易と安全保障の恩恵について、応分の負担をすべきである。

 

・負担の方法としては、各国が軍事支出を増やすことは当然のこととして、このほかに、米国政府の関税支払いやドル安調整、米国債利息の受け取り放棄(→米財務省による利付国債の買い戻しと、超長期の割引国債での借り換え)などが考えられる。

 

・こうした負担に応じない場合には、関税を引き上げたり、安全保障の傘から外すことで対処する可能性がある。

 

・関税の大きさについては、たとえば、互いの関税率の比較、外貨準備蓄積の規模や自国通貨抑制の過去、国内市場の開放度、米国の知的財産権保護の程度、「第3国」として中国が再輸出して米国からの関税を回避することに貢献しているか否か、北大西洋条約機構(NATO)の義務を全額負担しているか、国連における主要な国際紛争で中国・ロシア・イランの側に立っているか、制裁を受けた企業がこれを回避したり、制裁を受けた企業と取引することを支援しているか、世界のさまざまな戦域における米国の安全保障の取り組みを支持しているか、テロリストやサイバー犯罪者などの「米国の敵」をかくまっているか否か、こうした基準によって、変わるかもしれない。

 

以上、筆者が解釈する、ミラン氏の考えのアウトラインです。
 

 

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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