フィリピン「貿易収支最新動向」…赤字急拡大の要因と今後の展望

3月24日週「最新・フィリピン」ニュース

フィリピン「貿易収支最新動向」…赤字急拡大の要因と今後の展望
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏がフィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週はフィリピンの経済成長に大きな影響を与える貿易収支とFDI(海外直接投資)の最新動向について解説していきます。

2024年のフィリピンのサービス貿易額

2024年のフィリピンのサービス貿易額は145億8,000万ドルとなり、2023年の181億8,000万ドルから19.8%減少。サービス輸出は前年比7.5%増の519億8,000万ドルでしたが、輸入は24%増の374億ドルに達しました。

 

内訳を見ると、その他のビジネスサービスが大部分を占め、155億7,000万ドルの黒字を記録しました。これには研究開発、専門・経営コンサルティング、技術・貿易関連サービスなどが含まれます。次いで電気通信・コンピューター・情報サービスが59億3,000万ドルの黒字となりました。

 

一方で運輸サービスは38億7,000万ドルの赤字、旅行は30億4,000万ドルの赤字、金融サービスは20億ドルの赤字、保険・年金は19億1,000万ドルの赤字となりました。

 

サービス産業はフィリピン経済の重要な成長ドライバーです。特にビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の収益が過去2年間で急増したため、サービス輸出の基盤が高くなったことが影響している可能性があります。サービス部門は国内総生産(GDP)の62%を占めています。

 

フィリピンIT・ビジネスプロセス協会(IBPAP)は、昨年の収益が380億ドルとなり、2023年の355億ドルから7%増加したと発表しました。一方、サービス輸入の増加は、技術ソリューションやサービスサプライチェーンのハイエンドにおいて、知的財産権に対するコスト増が背景にあります。IBPAPは、米国保護主義の影響を最小限に抑えるために、フィリピンは高付加価値サービスを増やす必要があるとしています。これは、サービスサプライチェーンのハイエンドを開発する必要があるということです。

 

ハイエンドのサービスや技術分野において、海外に人材を奪われるのではなく、地元の才能を引きつけ、維持する方法を見つける必要があり、今後、人工知能(AI)をこの分野に有効活用することが課題です。

 

2024年、フィリピンにおける経常収支赤字(CAD)は175億ドルとなり、2023年の123億9,000万ドルから41.4%拡大。これは、2022年に記録された183億ドルの赤字に次いで、過去2番目に大きい経常収支赤字です。これにより、2024年のGDPに占める経常収支赤字の割合は3.8%となり、前年の2.8%から拡大しました。第4四半期だけで、経常収支赤字は2023年の同時期の10億4,000万ドルから46億ドルに急増しています。

 

経常収支赤字の急激な拡大は、エネルギーと資本財の輸入の急増が大きな要因で、これは石油価格の高騰とインフラ需要によるものであり、輸出の伸びの方では、電子機器の輸出の伸びは依然として低迷。低迷する世界貿易状況と、中国や欧州連合などの主要市場からの需要の低迷が影響しています。

 

経常収支赤字の拡大は2024年の貿易赤字を拡大させました。貿易収支は2024年に542億1,000万ドルの赤字となり、前年の525億9,000万ドルから3.1%拡大しました。

 

BPOの収益と観光収入は増加していますが、貿易不均衡を相殺するには十分ではありませんでした。今後数カ月間、経常収支は米国の関税政策によって影響を受ける可能性があり、これは世界貿易、投資、雇用、世界のGDP成長を減速させる可能性があります。

 

世界の電子機器需要が回復すれば、フィリピンにおける輸出も緩やかに回復するかもしれませんが、下振れリスクは残ります。OFWの送金とBPOの収益は引き続き堅調と予想されるものの、ペソ高は成長を抑制するかもしれません。インフラ支出が積極的で石油価格が高止まりすれば、輸入の伸びが大きくなり、赤字が高止まりする可能性があります。

 

2025年、フィリピン中央銀行は経常収支赤字が121億ドル、GDPの2.4%と予想しています。

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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