2024年「フィリピンへの海外直接投資」…国別1位は日本
2024年のフィリピンへの海外直接投資(FDI)の純流入額は、中央銀行(BSP)のデータによると0.1%増の89億3,000万ドルとなり、2年連続の減少を脱しました。しかし、12月のFDIは前年同月比85.2%減の1億1,000万ドルとなり、過去11年間で最低の月間記録となりました。これは世界貿易の不確実性などが影響したとみられます。
2024年、フィリピンにおけるFDIのうち、株式を通した投資は13.1%増の27億ドルとなりました。投資の主な出資国は日本(38%)、英国(35%)、米国(10%)、シンガポール(8%)で、製造業(68%)、不動産業(12%)、情報通信業(5%)が主な受け入れ分野です。
12月のFDIは前年同月の7億4,300万ドルから大幅に落ち込み、前月比でも88%減少しました。これは2013年12月の1億216万ドル以来の最低水準です。
BSPは、非居住者による株式資本投資は増加したものの、現地企業の対外債務の返済が増加したため、FDIが減少したと説明しています。12月の貸付を通じた投資は、前年の6億1,800万ドルの流入から一転して1,900万ドルの流出となりました。12月のFDIの急落については、地元企業の短期的な財務圧力や企業のセンチメントの変化を示唆している可能性があります。また、企業が資本再投資よりも債務返済を優先していることは、金融環引き締めや利益率への懸念を反映している可能性があるでしょう。
また、投資減少の要因として、トランプ大統領による保護主義政策の影響も指摘されています。トランプ氏は就任前から中国、カナダ、メキシコなどの主要貿易相手国への関税を強化する意向を示しており、これにより海外へのFDIが減少し、米国内への投資や雇用が優先される傾向が出てきています。また、中国とフィリピンの関係悪化や気象災害による投資活動の停滞も要因のひとつと見られています。
さらにベトナムやインドネシアなどの国が、より強力なインセンティブや投資環境の改善により、フィリピンよりも多くのFDIを引き寄せた可能性があります。政策の不確実性や規制の安定性への懸念により、企業が資本投入を躊躇していると考えられます。
今後は、企業への税制優遇措置を強化する企業回復・税制インセンティブ法(CREATE法)の実施が、外国企業の投資を後押しするかもしれません。また、FRBやBSPの利下げにより資金調達コストが低下し、FDIの増加につながる可能性もあります。
BSPのレモロナ総裁は、2024年に最大50ベーシスポイントの利下げの可能性を示唆しており、BSPは現在金融緩和の方向にあります。ただ、2月の政策金利は、世界貿易の不確実性を理由に据え置かれました。BSPは、2025年のFDI純流入額を100億ドルと予測しています。