「不動産投資ローン」増加傾向
2024年12月末時点におけるフィリピンの銀行および信託部門の不動産分野へのエクスポージャーが増加したことが明らかになりました。これは「住宅および商業用不動産ローンの増加」が主な要因とされています。
フィリピンの銀行および信託部門の不動産分野へのエクスポージャー比率は2024年9月末時点の19.55%から12月末には19.75%へと上昇。前年同時期の20.17%と比較すると低下しています。増加の主な要因は「住宅および商業用不動産ローンの増加」とされ、フィリピン中央銀行(BSP)は金融安定性を維持するため、不動産業界への融資状況を監視しています。
フィリピンの銀行および信託部門による不動産向け融資と投資の総額は、2024年12月末には3兆3,100億ペソと前年比5%増。特に不動産ローンは前年同期比7.9%増の2兆9,500億ペソとなり、住宅用不動産ローンが9.6%増の1兆1,000億ペソ、商業用不動産ローンが6.9%増の1兆8,500億ペソを記録しました。不良債権額は0.4%増の1,088億7000万ペソとなりましたが、不良債権比率は前年の3.96%から3.68%へと低下しています。
不動産投資については減少傾向が見られ、前年の4,106億5,300万ペソから13.8%減少し、3,538億900万ペソとなりました。
コリアーズ・フィリピンのリサーチ部門責任者であるジョーイ・ロイ・ボンドック氏は、不動産エクスポージャーの増加について、企業の事業拡大によるものと分析しています。住宅市場においては、即入居可能(RFO)ユニットの増加が一因となっているとの見方を示し、多くのRFO物件に対して魅力的なプロモーションが実施されていることが購買意欲を高めていると述べました。以前は、RFO物件を購入する際、契約総額の5~10%の頭金を支払う必要がありましたが、現在は銀行融資の承認が得られれば、頭金なしで購入・入居が可能となるケースも増えており、これが住宅市場の活性化につながっていると指摘しました。
不動産ローンの増加は銀行融資全体の伸びと連動しています。2023年12月の銀行貸出総額は前年比12.2%増の13兆1000億ペソとなり、2年ぶりの高成長を記録しました。一方で、フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーター(POGO)への規制強化による影響で空室率が上昇しています。空室率の上昇と供給過多の影響で物件価格が下落すれば、一部の投資家が割安な物件を購入する動きも出てくる可能性があります。
今後の見通しについて、ボンドック氏は、RFO物件のプロモーションがさらに拡充されることにより、住宅不動産ローンの需要が引き続き増加すると予測しています。銀行の不動産エクスポージャーが増えれば、不動産市場全体の活性化につながると考えられます。
また、BSPの政策金利引き下げや準備預金率(RRR)の引き下げが融資全体の伸びを後押しする可能性があります。BSPのエリ・レモロナ総裁は2024年に最大50ベーシスポイント(bps)の利下げの可能性を示唆しており、3月28日には商業銀行およびノンバンク金融機関のRRRを7%から5%へと200bps引き下げることを発表しました。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた経済の回復を目的として、BSPは銀行の不動産融資限度を従来の総貸出額の20%から25%に引き上げる措置を講じました。この緩和策が続いていることで、銀行の不動産エクスポージャーの拡大に寄与していると考えられます。
