一流の布陣だったはずなのに…なぜ失敗したのか?
有名弁護士が担当して、遺産分割協議が決裂し、大手税理士法人が担当して節税の余地が残る結果になってしまったのか? 雅男さんに聞いたところ、弁護士と税理士は、雅男さんの父親のような大地主の相続の経験値が乏しく、相続の専門家とは言えないレベルでありながら、コミュニケーションも不足しており、節税や二次相続対策の節税まで踏まえた内容を導き出せなかったのだろうと言われました。税理士は、チームを主導する弁護士に遠慮して意見を挟まなかったようです。
評価減は進めて、他は断念した
税理士と打ち合わせ、土地の評価をし直してもらい、相続税を下げることはできました。雅男さんと妹の相続税が下がることに。妹にも相続税が下がる理由を資料にして、理解を得るようにしましたので、喜んでもらえました。
次の課題は、母親と雅男さんの相続する不動産を変更だったのですが、さらに相続税の納税を減らし、二次相続対策をしやすくする案については、断念することになりました。
妹が立てた弁護士と雅男さん側の弁護士との話し合いで、遺産分割協議を終えたばかりでしたので、その後の雅男さん側の提案は何か裏があるのではと勘ぐられるに違いないとなり、母親の取得割合などを変えることは断念しました。
家族がばらばらになり最悪の事態に
こうして節税の機会を逃したばかりか、家族の亀裂は決定的なものとなり、何とか父親の相続税の申告は終えられたのですが、妹との関係は修復には至りませんでした。母親も、雅男さんも体調を崩し、うつ状態となり、まだ、体調は完全には戻らず、薬が手放せない日常で、修復は望めず、悔いが残る結果となってしまいました。
相続の手続きが始まってから、1年未満の間、今までとても仲のよい兄妹だったのに、雅男さんにとってはこの展開は予想だにせず、都市銀行の遺言書の失敗からスタートし、有名弁護士、大手税理士法人の失敗が重なり、最悪の事態に。
数ヶ月で、母も妹たちも雅男さんも体調を崩し、鬱病を発症してしまい、病院に通い、薬で症状を抑えながらの日々を過ごしていたといいます。
その後は、体調は回復し、落ち着いてはきたものの、本当に大変だったと話してくださいました。
二次相続対策は土地を交換して効果を捻出
二次相続対策となる母親の賃貸事業の土地については、雅男さんが相続した不動産と等価交換することを提案しました。そのようにすることで母親の相続税は節税でき、その後に公正証書遺言を作成してもらいました。
相続税が節税できたことは妹にとってもいいことなのですが、雅男さんが自分が有利になるように進めているのではないか? という妹の不信感は消えないようでした。雅男さんは「弁護士の遺産分割協議の進め方が致命傷になった」と嘆いていました。
あれほど仲が良い家族だったのに、相続で一家の心はバラバラに……。失ったものの代償は大きいと言えます。自分の健康も、家族の信頼も代えがたいものだけに、いくら有名で優秀な専門家をそろえたとしても逆効果になりかねません。専門家選びを慎重にしなければならないことも必要で、争いを引き起こさないことが大事です。
この事例の教訓
・相続人と専門家、専門家と専門家のコミュニケーションが取れていなかった
→相続人全員と専門家チームが常に情報共有しながら進めるようにすることが大事
・弁護士が高圧的で相続人の意見を聞いてくれなかった
→一部の意見を押し通そうとするのではなく、全員の意見を聞くことが大事
頼むなら、こんな専門家を探したい
・自分の意見を押しつけるのではなく、全員の話を聞いてくれる人
・各人の意見を聞いて、オープンで公平な手続きをしてくれる人
・一部の相続人の暴走を止めてくれる人
・専門家間の適切なコミュニケーションを取るようにコーディネートできる人
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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