インフレ・年金減少…「ゆとりある家計のため、貸家運営で資産運用」はアリか、ナシか【経済評論家が回答】

インフレ・年金減少…「ゆとりある家計のため、貸家運営で資産運用」はアリか、ナシか【経済評論家が回答】
(※写真はイメージです/PIXTA)

いまの日本経済には、インフレや少子高齢化の進展といった複数の不安要素が潜んでいます。そのような状況下、副収入を得るために不動産投資を検討する人が増えています。貸家の1、2軒分の家賃収入が上乗せされれば家計はかなりラクになると思われますが、この選択肢はアリでしょうか、それともナシでしょうか? 経済評論家の塚崎公義氏がアドバイスします。

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資産運用として貸家を持つ人もいるが…

家賃と不動産価格を比べると、家賃が不動産価格の数%あるのが普通であり、銀行預金の金利よりはるかに高いので、魅力に感じる人も多いはずです。実際、資産運用として貸家を持つ人は珍しくありません。

 

しかし筆者は、貸家保有はお勧めしていません。それほど儲からないうえに、リスクが高いからです。

 

貸家を持つとさまざまなコストがかかります。借家人が入れ替わるたびに壁紙を張り替えたり、新しい借家人を探したりするコストがかかりますし、借家人からのさまざまな要請にも対応しなければならないでしょう。家が古くなって売りにくくなることも考えあわせれば、それほどラクに儲かるわけではないはずです。

 

筆者が重視するのは「リスク」です。空き家になってしまうリスクは、少子高齢化の人口減少経済では、相当高くなると推察されます。総人口の減少だけではありません。借家を新しく借りるのは、就職や結婚した人が多いでしょうから、少子化や晩婚等で就職と結婚が減れば借家の需要も落ちていくでしょう。

 

人口減少経済では、不動産価格が下落していくリスクもあるでしょう。立地条件等を慎重に選ばないと、空き家状態が続き、売ろうと思っても安くしか売れない、といったことが起こりかねないのです。

 

借家人がトラブルの原因になるリスクもあります。もしかしたら、モンスタークレーマーかもしれませんし、家賃未納の常習犯かもしれません。高齢者のひとり暮らしの場合には孤独死のリスクだってあるでしょう。

 

サブリース会社による「30年間家賃を保証します」などという宣伝も見かけますが、細かい字で書かれた説明文も、すみずみまでしっかり確認しましょう。現在の家賃を保証するのではなく「将来にわたって周辺地域の平均的な家賃を保証します」という契約かもしれません。

 

相続税対策として所有地に貸家を建てる人もいるようですが、上級庶民程度であれば相続税率はそれほど高くないので、節税メリットとリスクをしっかり比較することが必要でしょう。

 

自宅近くの不動産は事情がわかっているので、貸家を自宅近くに買う(建てる)人も多いでしょうが、地域全体が衰退したり災害に見舞われたりすると、自宅と貸家の価値が一気に下落しかねません。不動産が自分の財産総額に占めるウエイトは相当大きいでしょうから、これは悲劇です。

 

そうはいっても、慣れ親しんでいない地域の物件を取得するのは大変ですし、自宅から離れていると管理だって大変かもしれませんね。

REITのほうが、貸家より「コスト」も「リスク」も小さい

REITという商品があります。プロが多くの投資家から資金を集めて不動産を多数購入して賃貸し、儲かっても損してもそのまま(手数料を差し引いて)投資家に返還する、というものですから、株式投信の不動産版と考えていいでしょう。

 

お勧めするわけではありませんが、自分で貸家を持つ場合と比べるとメリットが大きいので、「貸家を検討しているなら、REITも検討しよう」ということはいえると思います。

 

最大のメリットは、プロとアマの違いです。上場株式への投資は、初心者が銘柄を選んでもプロが銘柄を選んでも、それほど結果は違わないのでしょうが、不動産の選び方から管理の仕方まで、プロとアマの差は歴然でしょう。

 

規模のメリットも大きいといえます。株式投資は、1株買っても100万株買っても同じ値段ですが、個人投資家が賃貸マンションを一部屋買うのと、REITが一棟建てるのでは、販売コストが不要なぶん、コストがまったく違ってきます。

 

分散投資という観点でも、REITはメリットがあります。全国の各都市に不動産を持てば、災害リスクや衰退リスク等が軽減できるでしょうから。

住宅購入資金は「REITでの運用」も選択肢に

不動産価格が上がるか下がるか、予想することは容易ではありません。その意味では、すでに自宅を持っている人が賃貸不動産やREITを持つのはリスクだといえるでしょう。資産総額に占める不動産の比率が大きくなりすぎるからです。

 

しかし、これから不動産を購入しようと考えている人が、購入資金をREITで運用するのは合理的かもしれません。不動産価格が上昇すれば購入資金がかさみますが、REITが値上がりしていれば一部でも値上がり益を利用することができるからです。不動産価格が下落していけば、REITが値下がりしてしまいますが、住宅が安く買えるのですから、REITの値下がり損など気にならないでしょう。

 

自宅を持っている人のREIT投資はバクチのイメージ、これから買う人のREIT購入は保険のイメージでしょうか。

 

余談ですが、株価暴落保険というものがあったとして、株を持っている人が保険に加入するのは保険ですが、株を持っていない人が株価暴落を予想して保険に加入するのはバクチです。同じ商品でも、人によってバクチになったり保険になったりする、という意味ではREITと似ているのかもしれませんね。

 

最後に、東京のマンション価格が高騰していることには留意が必要でしょう。地方の賃貸物件は空き家リスクが高く、東京の賃貸物件は家賃と比べて購入価格が高すぎて儲からない、という状況に近づきつつあるかもしれません。後で振り返ると今が不動産バブルだった、という可能性もあるでしょう。投資を決める前に考えるべきことは多そうです。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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