〈最強のインフレ対策〉元本保証だけじゃない…インフレ分もプラスして受け取れる金融商品の名前【経済評論家が解説】

〈最強のインフレ対策〉元本保証だけじゃない…インフレ分もプラスして受け取れる金融商品の名前【経済評論家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

バブル崩壊後の長期低迷期、ずっとデフレだった日本経済。しかし、時代はいよいよインフレへとシフトしようとしています。資産を預貯金だけで持っていては、目減りする一方です。では、どのような資産へと振り分けていけばいいのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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普通の国債は固定金利だが…

「国債」というのは、日本国政府の借用証書です。銀行の定期預金証書と似たようなものです。プロ向けの国債は、途中解約できない代わりに途中で売却できるわけですが、個人向け国債は途中解約できるので、銀行預金と同じようなものだと考えていいでしょう。

 

普通の国債は、最初の段階で満期までの金利がすべて決まります。これを「固定金利」と呼びます。例外は、後述の「個人向け国債10年物」と「物価連動国債」です。

 

プロ向けの国債と個人向けの国債がありますので、普通の人は個人向け国債を買えばいいでしょう。預金の場合、銀行が倒産しても政府が1,000万円まで代わりに払ってくれますから、庶民は銀行の倒産を心配する必要はありませんが、1,000万円以上預金がある人は国債の方が安心だ、ということはいえるでしょう。

 

もうひとつ、国債のほうが銀行預金よりも少しだけ金利が高い場合が多いようです。金利のことを考えると、個人向け国債10年物が魅力的に感じられます。

個人向け国債10年物は「変動金利」で「元本保証」

固定金利ではない国債のひとつとして、個人向け国債の10年物があります。これは、支払う金利の額を最初に決めるのではなく、その時々の金利を用いて金利支払額を計算する、というものです。具体的には、利払い日の長期金利の0.66倍を用いて計算した金利の額を、次の利払い日に支払うことになります。

 

長期金利というのは、10年物のプロ向け国債の利回りのことを指すのが普通で、本記事でもその意味で使っています。長期金利は、プロたちが予想する短期金利によって決まります。将来の短期金利が上がると思えば長期金利はすぐに上がり、下がると思えば長期金利はすぐに下がるのです。

 

プロたちが短期金利が上がっていくと思えば、借り手は「多少高い金利でも長期固定金利で借りておこう」と考えますし、貸し手は「長期金利が高くないなら、短期国債を持っていて満期ごとに新しい短期国債を買ったほうが儲かりそうだ。だから、固定金利の長期国債を持つのは避けたい」と考えるので、長期金利は上昇するのです。

 

実際には「長期の借り入れをする代わりに、持っている長期国債を売却して長期資金を手に入れようとする借り手も多いので、その場合には長期国債の価格が下がることによって国債の利回りが上がる」わけですが、これはむずかしい話なので、気にせず読み進めてください。

 

短期金利が実際に上がる前でも、長期金利は上がりますから、プロたちが将来の金利の上昇を予想している局面では、個人向け国債10年物を持っている人は、銀行預金をしている人よりも高い金利が受け取れるのです。0.66倍というのは不思議な気もしますが、過去の金利を見ると、長期金利のほうが短期金利より高かった時期が長いので、悪い話ではないでしょう。

 

バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済はデフレでしたが、最近になってインフレの時代に変化した兆しが伺えます。ガソリン価格等は国際情勢で変動しますが、少子高齢化による労働力不足で賃金が上がっていく傾向が定着すれば、売値も上げざるを得ず、インフレが続く可能性も高いわけです。そうした状況下、プロたちは将来の短期金利の上昇を予想しているため、現在の長期金利は短期金利よりかなり高くなっているのです。

 

「銀行預金はインフレが来たときに目減りする(買えるものが減ってしまう)リスク資産だから、インフレに強い株や外貨も持ちましょう」というのが筆者の口癖ですが、「株や外貨は値下がりするリスクがあるので嫌だ」という人も多いですね。そんな人には「個人向け国債10年物は値下がりリスクがないし、満期には全額戻ってくるので安心です」と伝えたいです。

 

途中解約すると直近1年分の金利を返却しなければなりませんが、損をするわけではないので、気にする必要はないでしょう。1年間は換金できないので、その点だけは要注意ですが。

最強のインフレ対策としての「物価連動国債」

筆者が最強のインフレ対策だと考えているのが、物価連動国債です。1,000万円で国債を買い、10年後にはインフレが来なければ1,000万円(プラスわずかな利子)が受け取れます。そして、インフレが来れば、10年後にはその分もプラスして受け取れるのです。物価が2倍になっていれば、2,000万円が戻ってくるわけです。

 

筆者がこれをお勧めするのは、南海トラフ大地震が怖いからです。南海トラフ大地震が来れば、すべてのものが不足し、猛烈なインフレが来るでしょう。そんなときに老後資金を1,000万円持っていても、老後の生活にはほとんど役に立たないかもしれません。

 

物価連動国債であれば、物価が5倍になったら5,000万円戻ってきますので、退職金がインフレで目減りすることがないのです。

 

物価連動国債は、額面で買えるとは限りません。額面1,000万円の物価連動国債が1,050万円で売っている場合などもあります。その場合、インフレが来なければ50万円は損をすることになりますが、それくらいは南海トラフ大地震に備えた「保険料」だと考えれば、安いものではないでしょうか。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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