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「ゴールドカード」の概要
2025年2月26日、トランプ大統領は米国の永住権を取得できる「ゴールドカード」(以下「GC」とします)を500万ドル(約7.5億円)で購入できると発表しました。まだ詳細が明らかになっていないので、不透明な部分もありますが、従来の永住権を認める「グリーンカード」と比較して、購入代金を支払うと短期間にGCを取得できるというメリットがあります。
たとえば、日本国籍の個人がGCを購入したとします。この個人は米国の永住権を得たことで、米国における出入国が容易になります。GCの購入は永住権の取得ですので、日本の国籍を離れる必要はありません。この個人がGC購入後、数年で米国国籍に相当する市民権を得たとします。この場合、日本は重国籍を認めていませんので、日本の国籍を離れて米国籍となります。以下では、永住権取得後に将来的に市民権を得ることを前提とします。
ゴールドカードは誰が得をするのか?
米国に500万ドルを支払うことができる富裕層は、それなりの所得あるいは資産の保有者であることは推測できます。米国の所得税法では、個人は市民権を有する者、グリーンカードなどを保有する居住外国人、外国に居住する非居住者に区分されます。
市民権を有する者とグリーンカードなどを保有する居住外国人は、全世界所得が米国における課税所得の範囲となります。このことは、富裕層にとって有利とはいえません。
所得税の課税がない国あるいは低税率国は多くあります。たとえば、地中海沿岸のモナコ、北大西洋のバミューダ、中東産油国などは所得税の課税がありません。これらの国などに居住していた個人は、所得税の厳しい米国に移住するメリットがありません。
GCは米国にとって、国のステータスを売り物にしたある種のビジネスです。取得額の500万ドル以外に、富裕層の移住により、米国政府は所得税収入の増加や高級不動産の取得などによる経済の活性化が生ずる利益を得ることになります。
しかし、税務上のメリットは別にあります。中国本土や香港、シンガポールなどの相続税のない国の住民はありがたみがありません。ですが、相続税のある国の住民は夫婦ともに米国市民になりますと、夫婦間の贈与および夫婦間の相続は無税です。
また、米国の連邦遺産税の基礎控除額は、1,361万ドル(2024年:邦貨で約20億円)となっています。ただし、米国の場合は、州税に相続税がある州もあります。また、相続する財産の種類と所在地により国際的二重課税となることもありますので、米国のGCを購入することを希望する個人は、包括的に課税状況を分析する必要があります。
