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国際税務に混乱を招くトランプ大統領…
トランプ大統領は就任早々、影響が大きいとされる「大統領令」や「大統領覚書」を多く発出しました。
大統領令は大統領が米国政府などに対して発する行政命令ということは理解できますが、大統領覚書は耳慣れない用語で、両者の相違が明確ではありません。
これを解説した梅川健による「アメリカ大統領権限分析プロジェクト:アメリカ大統領研究の現状と課題(2)」(東京財団政策研究所)によれば、大統領覚書は大統領が行政組織に対して具体的な法執行の方法を命令するための文書とのことです。それによると、大統領覚書は大統領が望んだ場合にだけ連邦官報に記載され、根拠法が曖昧でも許されていると記しています。
OECDはBEPS(税源浸食と所得移転)活動計画の一環として、デジタル課税の検討を続けてきました。米国を含むBEPS実施のための会議体である「包摂的枠組」でコンセンサスを得ながら、制度を整備してきました。日本も令和5年度税制改正で「グローバルミニマム課税」を創設しました。これは、OECDがデジタル課税において検討した2本の柱の1本に該当します。
報道によれば、トランプ大統領は1月20日に署名した大統領覚書で、法人税の最低税率に関する国際ルールは米国内では「効力を持たない」との見解を示し、OECDとの合意から事実上離脱することを表明しました。
この大統領の姿勢は、1期目在任中の国連の「気候変動枠組み条約」のパリ協定を離脱したことからも容易に想像ができました。トランプ政権は2期目もこの国連の条約からは離脱する意向です。このことから、日本の財務省あるいはOECDが多くの作業量を費やしたデジタル課税について、トランプ大統領就任後に国際的ルールから離脱することは予測できました。
日本はどのようなスタンスで対処するのか
上述したOECDによる2本の柱のもう1本は、大手IT企業の収益を得ている市場国への所得配分案です。
OECDは試行錯誤の結果、多国間租税条約(以下「MLC」とします)を作成しました。MLCの発効には、米国の意向が大きく影響しています。上述したように、米国中心主義で、米国側の負担の増えるルールにはトランプ大統領は反対の意向のようで、MLCも長い時間かけて形作りをしたのですが、ボツとなる可能性が出てきました。
大手IT企業が多くの収益を得ているEUなどの市場国は、収益に見合った税額を納付しないこれらのIT企業対策として、デジタルサービス税(DST)の導入を進行中です。これに対して1期目のトランプ政権は、DSTの課税をする国に対して関税引き上げなどの措置で対立しました。
この対立の根底には、大手IT企業による「行き過ぎた租税回避」が行われたことで、収益に見合った税収を得ることができないEUなどの不満があります。
大手IT企業の税務について、2024年9月10日にEU欧州司法裁判所がアップルに追徴課税を求めた決定を支持する判決を出しました。これは、アップルがアイルランド政府に働きかけて税の優遇措置を受けていましたが、EUの欧州委員会はこれを違法な補助にあたるとして、日本円にして2兆円余りの追徴課税を行うよう求めた裁判です。
MLCがOECDの思惑どおり施行されるかどうかは不透明です。OECDの「包摂的枠組」に参加していたアフリカ諸国などの途上国から、自らの意見が反映されていないという不満がありました。
国連はこれらの不満を背景に、OECDとは異なる活動を開始しました。発端は2023年11月のナイジェリア案です。特別委員会が設置されて国連国際租税協力枠組み条約の作成が、2024年8月に賛成多数でスタートしたのです。この枠組み条約の成案は、ほぼポスト・トランプの時期にあたる2027年末と予測されています。
今後、MLCと国連の国際租税協力枠組み条約の双方が機能しない事態が想定されます。問題のキモは、国際税務の安定した執行の確保です。「行き過ぎた租税回避」に起因する対立ではありません。日本はMLC推進派ですが、今後どのようなスタンスでこの問題に対処するのかが見えません。
矢内一好
国際課税研究所首席研究員
スモールビジネスのオーナー経営者・
リモートワーカー・フリーランス向け
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