リタイア後のハワイとグアムへの移住…年金はどっちがオトク?ハワイとグアムでの決定的な違いとは!?【国際税務の専門家が解説】

リタイア後のハワイとグアムへの移住…年金はどっちがオトク?ハワイとグアムでの決定的な違いとは!?【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の海外移住先として人気の高いハワイ。観光地として近いグアムやサイパンを比較対象として考える人も少なくないと思います。ところが前者と後者では「属領」かどうかという大きな違いがあります。定年退職後の生活にどのように影響してくるのでしょうか。税金の面から見ていきましょう。本連載では、国際税務の専門家が解説します。

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グアムやサイパンのような属領は「日米租税条約」の適用範囲外

米国には、本土にある50州とコロンビア特別区と海外にある「属領」があります。日本からの観光客の多いグアムとサイパンは、米国の属領です。

 

属領は米国主権下にありますが、税制上は外国ということになっています。日本と米国間で締結されている日米租税条約の適用範囲外です。租税条約の定義には、50州とコロンビア特別区に限定されており、属領は含まれていません。

 

また、グアムとサイパンは観光地として同列に扱われていますが、グアムは北マリアナ諸島のグアム島で、サイパンは北マリアナ諸島の一部のサイパン島です。米国の自治領(コモンウェルス)になっています。サイパンは自治政府による内政は認められますが、国防や外交は米国が行います。この自治領であると、国際連合非自治地域リストから除外されます。一方のグアムはこの国際連合非自治地域リストに含まれています。

グアム、サイパン住民は米国連邦所得税を免除

属領における個人の居住形態の判定が必要になります。判定基準は以下になります。

①課税年度において183日の物理的滞在

②課税年度中に属領の外に住所を持たないこと

③外国と密接な関係を持たないこと

 

これらの基準を満たす場合、属領における真正な居住者となります。これら属領の真正な居住者は、属領において生じた所得を連邦所得税から除外することが認められています。仮に、属領の真正な居住者が属領以外の地域からの所得があった場合、連邦所得税からの除外は認められません。

グアムの老後は「二重課税」が待っている

日本で定年退職をした夫婦が移住するとします。夫婦は共働きで別々に厚生年金が支払われます。住居があり、公的年金以外に企業年金などの上乗せ分でもあれば、物価の高い土地でも生活は可能でしょう。

 

また、グアムとハワイはいずれも米国の主権下にあることから、移住に際して永住権を認める「グリーンカード」を所有しているとします。グリーンカードは米国籍を意味するものではありませんので、日本国籍はそのままです。グリーンカード所有後、数年で市民権の取得が可能になります。

 

グリーンカードあるいは市民権所有者は、米国において全世界所得の申告納税が義務づけられます。

 

まず、外国に居住して日本で支払われる年金の受領は可能かという点は気になるところです。公的年金に関して一定の書類を提出すれば、外国の金融機関で年金を受け取ることができます。

 

この夫婦は税制上、米国居住者で日本非居住者です。日米租税条約の適用が可能です。しかし、上述したように、ハワイはこの租税条約の適用可能な範囲ですが、グアムは範囲外です。

 

日米租税条約が適用になりますと、年金は居住地国課税になります。居住地国は米国(50州およびコロンビア特別区)です。その結果、年金は日本で課税されるのではなく、米国で課税されます。米国は夫婦の合同申告を認めています。

 

他方、グアムの場合は、日本において年金の課税免除になりません。グアムでは域外の所得として、米国連邦所得税の課税になります。米国における申告において、日本で納付した税額について外国税額控除が認められます。

 

金額の面で有利不利の数字は出せませんが、グアムの方が二重課税となります。

 

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

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