60歳からの支出は大幅にダウン…その理由は?
前回の記事で、老後は「90歳まで収入を伴う仕事をする」ことを目標としてはどうかとご紹介しました。
しかし、現役時代と同様に働くということではありません。90歳まで楽しく自分らしく働き続けるためのキーワードの1つが「小さな仕事でOK」です。
実際にこれからどれぐらいの収入を目指せばいいのかは、それぞれの家計の事情やライフスタイル次第ではありますが、平均データを使った生涯収支から試算してみます。
まず支出についてです。一般的に言えば60歳からの支出は大幅にダウンします。その理由は人生の二大出費である教育費と住居費が大きく減るからです。
皆さんも60歳になるまでには子どもが独立して教育費の出費はなくなり、住宅ローンも退職金で完済できるという人が多いのではないでしょうか。
データをみると、65歳以上の無職夫婦2人世帯の場合、月々の平均支出額は28万2,497円(総務省統計局「家計調查年報」2023年)です。50代の勤労世帯(2人以上)の月49万6,772円と比べると、21万4,275円少なくなっています。
教育費や住宅ローンが減るのはわかるけれど、60歳以降は医療費が増えるのでは? と心配している人もいるかもしれません。けれども上記の支出の内訳で確認してみると、65歳以上の無職夫婦2人世帯で保健医療費は、月1万6,879円、単身世帯で7,981円。それほど大きな金額ではありません。
入院などで高額の医療費がかかった場合も、収入に応じて自己負担額の上限がある「高額療養費制度」を利用できますし、民間の保険に入っていればより安心です(この機会に保険の中身の確認はしたほうがよいですが)。
将来介護が必要となった場合の備えはいくら必要でしょうか。私たちが要介護2になるのは95歳と想定、それから100歳までの5年間は介護サービスを利用するとしましょう。私たちは40歳から介護保険料を払ってきているので、公的な介護サービスを自己負担1割(収入によっては2~3割)で利用できます。
どんな介護を受けたいかでかかる費用は大きく異なりますが、実際にかかった費用の平均として580万円(1人)というデータがあります(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調查」2021年)。
内訳は初期費用(介護ベッドの購入や住宅の改修など)で74万円、その後のサービス利用料が506万円(月8.3万円×介護期間5年1か月)です。日々の暮らしの予算とは別に用意すべき資金の目安となるかと思います。

