(※画像はイメージです/PIXTA)

人生100年時代の今、両親の人生も長くなっています。とはいえ、自分が50~60代になれば、お互いに残された時間は長いとはいえないでしょう。本記事では、ライフシフト研究者の河野純子氏の著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、後悔しない両親との時間の過ごし方について解説します。

もう一度、親との暮らしを楽しむ

結婚している場合、双方の親の介護をどう考えていくのか、悩ましいこともあります。介護が必要となるタイミングで、夫婦の関係を見直すケースも聞くようになりました。

 

次にご紹介するのは、親の介護がきっかけではありませんが、卒婚したことで、気兼ねなくもう一度親との暮らしを楽しむことができた平紀和さんです。

 

アパレル企業を経てスタイリストとして独立した平紀和さんが、卒婚をしたのは55歳のとき。息子が高校3年生に進級したタイミングでした。その7年前に両親の関係が破綻し、平さんはスタイリスト事務所のある神奈川県葉山町に父親を引き取っていました。

 

新潟で高校時代までを過ごして上京したのちは距離のあった父親との関係ですが、事務所を手伝ってもらう形でともに働く日々は、お互いを「個」として認め合い、溝を埋めるような時間だったといいます。一方で妻と息子が暮らす東京都内の自宅にはなかなか帰ることができず、夫婦の関係性はぎくしゃくしていきました。

 

夫婦で話し合い、それぞれの人生を楽しもうと卒婚。その後平さんの父親のがんが発覚します。泊まり込みで介護をしましたが、半年後にお亡くなりになりました。けれどもできる限りのことはやったというきっぱりとした気持ちだったといいます。

 

その後、平さんは都内に住む妹の家に同居していた母親を呼び寄せて、葉山町に一軒家を借りて一緒に暮らすという選択をします。

 

もともと葉山町は、平さんにとって子どもの頃に小説を読んで知ってからずっと憧れていた場所。事務所を構えたのもそんな背景がありました。憧れの場所での40年ぶりの母親との暮らしは想像以上に楽しく、母親の健康的な手料理で平さんの血圧も下がったとか。

 

「いつか終わる2人暮らしなので、一緒にいられるいまはかけがえのない時間」だと平さん。母親は手先も器用なので、平さんのアシスタントとして週に1回テレビ局にも同行してもらっているとのこと。

 

母親は「こき使われて大変」と言っていましたが、その笑顔を見ていると必要とされている誇りを感じます。86歳の新米アシスタントを採用した平さん、どんなプレゼントよりも素晴らしい親孝行をしているように感じます。

 

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※本連載は河野純子氏の著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし

河野 純子

KADOKAWA

60歳は人生の転換点。これからの40年は、楽しく働く、自由に生きる。 「とらばーゆ」元編集長にしてライフシフト・ジャパン取締役CMO、人生100年時代のライフシフトを研究する著者がひもとく、60歳からの仕事と暮らしのリア…

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