日本人の約10人に7人が「日常生活に不安」を抱えた2000年代“格差社会”が拡大したワケ【経済学研究院准教授が解説】

日本人の約10人に7人が「日常生活に不安」を抱えた2000年代“格差社会”が拡大したワケ【経済学研究院准教授が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

1990年代以降、雇用の不安定化が進み、格差社会への不安が広がります。自由な市場は本当に人々を豊かにしたのでしょうか。本稿では、北海道大学大学院経済学研究院准教授の満薗勇氏の著書『消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(中央公論新社)より詳しく解説します。

求められる自己責任

同時に規制緩和は、消費者に対して自己責任を求めた。

 

たとえば、1993年に首相の私的諮問機関である経済改革研究会(座長・平岩外四経団連会長)がまとめた報告書は、「価格規制、参入規制などの経済規制は原則として廃止」とし、さらに「消費者保護や安全・環境基準などに関する社会的規制は自己責任を原則に最小限に」する方針を打ち出した。

 

これを報じた新聞も、「消費者を保護する安全、環境規制などは今後とも欠かせない」が、「規制緩和を要求しながら、何か問題が起きると、政府の責任ばかり追及するようではいけない」として、「規制緩和の時代は、自分で自分を守る心構えを一層、消費者に求めている」との受けとめを示している(『読売新聞』1993年11月9日付)。

 

消費者行政でも、以下のような考え方に沿って、規制緩和の流れに応じる方針が打ち出された(経済企画庁編『ハンドブック消費者』1994年)。

 

現在、生活者・消費者重視の視点から、規制緩和の推進など、旧来の制度や慣行を抜本的に見直し、創造的で活力のある経済社会システムを構築することが求められており、これにより、自由な競争が促進され、商品・サービスに対する消費者の選択の幅が拡がることが期待されています。

 

こうした中で、消費者一人一人の生活が、質の高いゆたかなものとして実感できるようにしていくためには、消費者が自己責任の考え方に立って必要な情報を収集・選択し、主体的かつ合理的に行動することが不可欠です。

 

さらに、企業においては消費者志向をより一層強めることが期待されるとともに、行政においては新時代にふさわしい消費者政策の推進に努める必要があります。

 

規制緩和による利益の恩恵にあずかるためには、消費者の自己責任が必要だというかたちで、取引主体としての消費者に自己責任を求めていたことがうかがえよう。

 

1990年代後半に、規制緩和を議論する政府系委員会の場で、規制緩和=消費者主権とする認識が示されていたとの指摘がある(斉藤徹史『規制緩和の経験から何を学ぶのか』総合研究開発機構、2013年)。消費者被害があることは事実だとしても、不安だからと消費者が選択を避けては何も変わらない、という趣旨の発言もあったとされる。

 

そこでの消費者主権の理念は、市場原理を支える消費者の責任に力点を置くものである。財やサービスを購入するかどうかは消費者の選択に委ねられるため、消費者が自己責任を回避すると市場原理の働きを損なう。こうした論理を媒介として、消費者が自己責任を引き受けようとしないから規制緩和が進まないのだ、という方向に議論が展開していったのである。

 

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本連載は、満薗勇氏の編著『消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(中央公論新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで

消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで

満薗 勇

中央公論新社

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