(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進み、介護を必要とする人が増えつづけています。必然的に介護に携わる人も増えており、現役世代にとって「仕事と介護の両立」は大きな課題といえるでしょう。両立が難しい場合には、親を介護施設に入れるという選択肢も視野に入りますが、その選択が後に大きな後悔へと変わることも……。本記事では、佐原さん(仮名)の事例とともに親の介護において考えるべきポイントについて、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

施設での生活に馴染めず、衰弱していく母

「家に帰りたい……なんでこんなところにいなければならないの?」

 

入所初日、母は落ち着かない様子でした。施設のスタッフは優しく接してくれたものの、母の不満は日に日に募ります。「ここに来たくなかった」「私はまだ自分でできるのに」と繰り返していたのでした。

 

施設では、入浴や食事の世話は行き届いていましたが、母の表情はどんどん暗くなっていきました。自宅では自由に過ごせたのに、施設では決められた時間に食事を取り、決められた時間に寝なければなりません。

 

そして、そんな生活が嫌になって施設の脱走を試みることもあったようです。幸い、施設のセキュリティは強固なうえ、脱走前に職員に宥められたと聞いた由美さんは、「出たらダメだよ。迷惑をかけたらダメ」そう、母にキツめの口調でいいつけました。

 

由美さんは頻繁に面会にも訪れていましたが、母の口数が日に日に減っていくことに気がつきました。心配になって職員に話を聞いてみると、「最近、食事の量が減ってきていて、少し元気がなくなっている」といわれました。しかし由美さんは「一緒に帰ろう」の一言がどうしても喉から出てきません。

 

それから半年後、1人で歩行することも困難になり、寝たきりになって施設を移ることになりました。

 

すっかりやせ細り会話もままならなくなった母を見ながら、由美さんは頭のなかで自問自答します。施設に入れたことで母の寿命を縮めてしまったのではないか、残された時間を母と一緒に過ごさず、母が安心できる環境を優先して施設に入れるという選択が本当に正しかったのだろうかと……。

 

「見て見ぬふりをしました。でもここに居させるしかなかった」由美さんは耐え難い苦しみを抱え、泣き崩れました。

在宅介護の家族への負担

由美さんは母である和子さんを施設に入れたことが本当に正しかったのかと悩んでいましたが、本稿でご紹介した事例の由美さんの判断は適切だったといえます。

 

親の介護が理由で仕事を離職しなければならず経済的に困窮してしまったという相談事例、自宅での介護に疲れて配偶者や親の命を奪ってしまったとても悲しい事件があとを絶ちません。在宅介護は、それだけ同居する家族に大きな負担が掛かることも多いものです。

 

在宅での介護サービスもありますので、まずはできるだけ本人の希望と家族の状況に合わせたサービスを選ぶというのも一つの方法でしょう。由美さんのように経済的・精神的に限界を感じたら、本人が嫌がっていても施設に入れるということも必要です。

 

無理をしてしまい、経済的に立ち行かなくなってしまったり、精神的に追い詰められて最悪の結末に至ってしまったりすることは是が非でも避けたいところです。そのためには、ときには由美さんのような決断をすべきというケースもあるでしょう。

 

また、誰もがいずれ歳を取り、人生を終える前に介護が必要になるということも少なくありません。そうなった場合を想定して、家族にできるだけ負担を掛けないためにも、介護施設に入ることを前提とした資産形成や保険等で資金の準備を行うことも大切です。

 

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