米国IRSには電話もつながらない?アメリカでの税務は「プロ」に頼む覚悟が必要…アメリカの「税務相談」の現状とは【税理士が解説】

米国IRSには電話もつながらない?アメリカでの税務は「プロ」に頼む覚悟が必要…アメリカの「税務相談」の現状とは【税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

米国IRS(アメリカ内国歳入庁)の相談窓口は電話がなかなか繋がらないといいます。さらにはここ数年、個人情報が盗まれる事件も増えているというのが現状です。一体何が起こっているのでしょうか。本稿では現在、カリフォルニア州にオフィスを構える国際税務のプロフェッショナルが米国IRSの現状を解説します。

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つながらないIRSのカスタマーサービス

コロナ禍において、IRSのカスタマーサービスに電話をしてもつながらないことが多く、アメリカ議会でかなり問題視されていました。それを受けてバイデン大統領は2022年にIRSの予算を大幅に増額し、7,000人のカスタマーサービス要員を新たに雇用しました。

 

しかし納税者がIRSのカスタマーサービスに電話しても、その3分の2はつながらない状況に陥っていると、アメリカの納税者権利擁護官サービス(TAS)より発表されました。

 

IRSはカスタマーサービスがかなり改善されたと発表していますが、この評価は実際にIRSに電話がつながり、話しができた納税者たちの評価です。つながらなかった納税者や留守電に回されてしまった納税者からの評価ではないとのことです。

 

納税者擁護官サービスは、IRSにつながるかどうかは、実際には宝くじに当たるかどうかに等しいとまで評価しています。当時のバイデン大統領の予算付けに関しても、IRSに対するアメリア市民の評価は最低に近いといわれていました。

 

昨年だけでも、210万人の納税者がIRSの徴収部(税金を徴収する部門)のカスタマーサービスに連絡をしていました。しかし、5分の1以下しかIRSにつながらず、仮につながったとしても、その後、税金の取り立てがどうなったかについては、どうなったかわからないとしています。

 

納税者のなかには給与を差し押さえられ、家賃を支払うことができなくなってしまうような深刻なケースも含まれており、アメリカのメディアは本来このような人たちこそ優先的にサービスを受けられるべきだと伝えています。

急激な金利上昇に伴い高まるニーズ…早急な改善が望まれる

さらに、日本では考えられないような話ですが、最近では個人情報が盗まれることによる税金被害が多く発生しています。2024年の4月時点で、50万件ほどが未解決の状態になっており、IRSは解決に必要な時間を22ヵ月と発表しています。

 

迅速に解決されるべき重要な問題ではありますが、解決には2年弱かかっているのが現状です。カスタマーサービスに人を割くか、実際の税務調査部門に人を割くかの判断が重要になると考えられます。

 

アメリカでは最近の急激な金利上昇によって、税金の滞納者に対する利息および罰金の金額が異常に膨らんでおり、この相談のためにIRSに連絡を取ろうとする納税者が急増しています。IRSは自動会話ができるチャットボットを取り入れることで解決を図っていますが、自動会話では解決できない複雑な案件も多いようです。

 

また、顧客から依頼された会計事務所もIRSに何度も問い合わせることになっています。長時間待たされるというのはもはや日常です。納税者にとってカスタマーサービスにつながりにくいというのは、重要な問題です。

日本では税務署に行けば対応してくれる

この問題は単に金銭的な問題で解決しないでしょう。組織上の問題も多分にあり、今後創意工夫を凝らした包括的な対策・改善を行っていく必要があると思います。

 

この点でいえば、日本の税務相談に対応する税務職員はことのほか豊富で、税務署に行けば、2時間待たされることはほぼありません。また、都会であれば税務署は至るところにあります。

 

アメリカでは電話さえつながらないわけであり、税務相談はやはり税金のプロに頼むことが常識になっています。アメリカはタダでは自身の権利も行使できない国であるということを認識しておかなければなりません。

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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