書類忘れて懲役「1360年」!?日本の比ではない…米国IRS(内国歳入庁)が科す恐ろしい“ペナルティ”【税理士が解説】

書類忘れて懲役「1360年」!?日本の比ではない…米国IRS(内国歳入庁)が科す恐ろしい“ペナルティ”【税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

米国IRS(内国歳入庁)はアメリカ人に対して、日本よりもはるかに厳しい規則を設けています。納税をしていても書類の提出を忘れるだけで、とんでもないペナルティが科されることがあります。本稿では国際税務のプロフェッショナルが、日本では考えられないようなペナルティについて事例を交えて解説します。

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ちょっとした書類を忘れて「220万ドル」の追加徴税!?

グリーンカードホルダーを含むアメリカ人は海外でのビジネスや金融口座のアメリカ政府(IRS)への開示を義務づけられています。そのための申告書への添付や、財務省宛に提出するフォームは膨大です。

 

もしちょっとしたミスでこれらのフォームの提出を忘れると、莫大な金額のペナルティが科されます。このペナルティは納税を行ったうえで悪気がないようなケースでも同様です。今回はペナルティが科された事例を紹介します。

 

現在82歳の女性(Aさん)は、戦時中にナチスドイツの被害を免れるためにアメリカにたどりついたのち、アメリカ市民となりボストンに在住しています。

 

ですが彼女にとって厳しい現実が襲い掛かりました。

 

1999年に彼女は父親からスイス銀行の口座を譲り受けました。この時点で本来であれば、海外の銀行口座を報告する義務がありました。しかし、そうとは知らず2010年までFBAR(Foreign Bunk and Accounts Report)の報告書を提出していませんでした。

 

その後、過去5年分に遡りFBARを提出したのですが、IRSから税務調査を受けることになり、結果的には4万ドルの追加徴税となりました。

 

この話はここで終わりません。IRSはFBARへの提出の遅延を理由にさらなるペナルティを科してきました。その額は220万ドルでした。彼女は修正憲法8条(アメリカ合衆国連邦政府が過度の保釈金や過度の罰金、または残酷で異常な刑罰を科すことを禁じる憲法の条項)に定められる“Cruel and Unusual Punishment(残虐で異常な刑罰)”“Excessive Fine(過度な罰金)”の禁止に反していると反論しました。しかし、下級裁判所では敗訴しました。

正直に報告したことが徒となり追加徴税…

Bさんは現在85歳。彼はカナダ生まれで、ペンシルベニア在住ですが、現役時代はエンジニアとしてフランス、カナダ、スイスに在住しており、給与振り込み用の口座はこれらの国で開設していました。

 

アメリカでの申告書の作成はCPA(公認会計士)に任せていました。しかし、このCPAはFBARをよくわかっていなかったため、FBARが何年にもわたって提出されていませんでした。2010年に彼はFBARの提出が必要なことに気づきました。すぐに彼はCPAに修正申告を依頼するとともにFBARの提出を行いました。結果、修正申告では追加徴税は発生しませんでした。

 

しかし、IRSはFBARそのものではなく、彼が海外のファンドに投資していることに目を付け、この開示を行うフォームを添付していないことを理由にペナルティとして81万ドルを科しました。また、FBARが未提出だったことに対し30万8,000ドル、さらにペナルティ未払いに対して9万8,000ドルが科されました。

 

Cさん(36歳)はフィラデルフィア州の警察官です。ポーランドに住む彼の母親は宝くじに当選、83万ドルを2年にわたってアメリカに住む彼の元に送金していました。

 

彼は、税務申告をしている税理士に次のように聞きました。

 

・このお金は贈与として自分に課税されるか

・何らかの報告義務があるか


税理士は両方とも「No」と答えました。しかし、正しくはNoとYesです。海外からの贈与・相続があった場合、Form3520の提出義務があります。彼は自身が別件で海外へ送金しようとした際、Form3520の存在を発見しました。

 

すぐに彼は弁護士に相談し、過去の贈与につきForm3520を提出しました。しかし、この正直な態度が裏目に出ます。IRSは彼に4万1,500ドルのペナルティを科しました。

 

彼はこのペナルティを支払いましたが、現在はIRSと係争中です。

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