書類忘れて懲役「1360年」!?日本の比ではない…米国IRS(内国歳入庁)が科す恐ろしい“ペナルティ”【税理士が解説】

書類忘れて懲役「1360年」!?日本の比ではない…米国IRS(内国歳入庁)が科す恐ろしい“ペナルティ”【税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

米国IRS(内国歳入庁)はアメリカ人に対して、日本よりもはるかに厳しい規則を設けています。納税をしていても書類の提出を忘れるだけで、とんでもないペナルティが科されることがあります。本稿では国際税務のプロフェッショナルが、日本では考えられないようなペナルティについて事例を交えて解説します。

本来は「悪質な脱税者」を裁くための厳しい制度

日本の税務署では考えられないことですが、IRSは海外資産の開示を忘れた納税者に対して、膨大な金額のペナルティを科そうと攻撃してきます。2020年までの過去9年間で徴収された金額は約15億ドル。日本では重加算税の対象でないものに対して、徴税が行われています。

 

FABRはオバマ政権から始まりました。このような厳しい規則が設けられているのは、違法ドラッグの密売人やテロリストを含む脱税者を厳しく取り締まるためでした。実際、この厳しい規則の成功例も存在します。

 

数年前、ロックチェスター大学の教授がFBARの提出をしていなかったペナルティとして、1億ドルの支払いを強いられました。なんと彼はチューリッヒ銀行に2億ドルを隠し持っていました。

 

海外のビジネスベンチャーから得た利益を隠蔽しようとしていたのです。彼は取り締まられるべき悪質な脱税犯であったことは間違いないでしょう。

 

その一方で、先に挙げたような納税を行っているにもかかわらず、FBARの提出忘れという名目でお金を吸い上げられている人たちがいるのも事実です。

IRSの途方もないペナルティから憲法は守ってくれない…

あるルーマニア人の男性はビジネス上で多くの海外口座を持っていました。彼は正しく納税を行っていたものの、5年間、FBARの提出を忘れていました。法律上、1回の違反に対してペナルティ1万ドルが科せられるので、5年間で5万ドルのはずです、

 

ところが、IRSは彼に対し、1口座につき1万ドルのペナルティだとして、計270万ドルを請求しました。控訴審でIRSが勝利し、現在は最高裁で争われています。

 

この事例の注目したい点は彼の数ある口座のなかには50ドルにも満たないものが、いくつかあったことです。50ドルの口座に対して1万ドルのペナルティは明らかに重すぎます。

 

恐ろしいことに、IRSは刑事訴訟を許されています。もしIRSが刑事訴訟を起こすことがあれば、この納税者に対し、1360年の懲役を求刑することもできるといいます。

 

税金を納めていたとしてもFBARを添付し忘れたことで、こんなことになるとはIRSは本当に酷い存在です。この点では日本の国税庁も同じだと思います。

 

このようなIRSの途方もないペナルティに対し、憲法は何らかの保障をしてくれるのでしょうか。 

 

先に挙げた事例では修正8条による抗弁が行われていましたが、過去の最高裁の判断では多くの場合、却下されています。ただし、1878年のWilkerson v. Utah(ウィルカーソン対ウタ州事件)では修正8条に対して、囚人が「生きたまま腹を裂かれ、斬首され、四つ裂きにされ」とし、公衆の前で解剖され、生きたまま焼かれるようなイギリスの伝統的な処刑方法は修正8条に照らし合わせると違憲であるという解釈が述べられています。

 

だとしたら、行き過ぎたペナルティが許されていいはずがありません。しかし、税金を巡る訴訟ではほとんどの場合、国家権力が勝ちます。これはどこの国でも同じです。

 

国は税金で成り立っています。国家公務員であるIRS、国税職員、裁判官が国の味方であることは、歴史が教えています。

 

国に逆らった行為をするのは、よほどの覚悟が必要ということなのでしょう。

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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