(※写真はイメージです/PIXTA)

従来よりたびたび論争が起きている「借家に住むべきか、それとも持ち家に住むべきか」という問題。一概には結論を出せませんが、それぞれの選択肢における今後の人生の展望を考えると、おのずと結論が見えてくるかもしれません。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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借家に住むべきか? 持ち家に住むべきか?

借家に住むべきか持ち家に住むべきか、という論争が専門家の間で頻繁に行われています。ということは、どちらかが一方的に有利だ、というわけではなさそうです。

 

注目すべきなのは、専門家たちの議論の中心は「どちらが経済的に得か」という論点だ、ということです。それで決着がつかないのであれば、別の視点を加えてみればよいのです。

 

筆者が重視しているのは、悲惨な老後を避ける、という観点です。長生きしている間にインフレが来ると、値上がりした家賃を長期間払い続けなくてはならず、老後資金が底を突いてしまう可能性が高まるのです。

老後の借家暮らしは「リスク大」なワケ

そもそも老後資金のリスクは、長生きしている間にインフレが来て老後の蓄えが底を突くことなのに、借家暮らしをしていると値上がりした家賃を長期間払い続けることになるので、ダブルパンチとなるわけですね。これは避けたいです。

 

高齢者の借家暮らしには、別の面でのリスクもあるようです。単身の高齢者に家を貸すのを嫌がる大家さんが多いようなのです。たしかに、借り手が単身の高齢者だと若者の場合と比べて大家さんの抱えるリスクは格段に大きいでしょうから、仕方のないことかもしれませんが、高齢者としては家が借りられなかったら大変ですから。

持ち家にもリスクはあるが、限定的

もちろん、持ち家にもリスクはありますが、老後資金の最大のリスクである「長生きとインフレ」に強いというのがなんといっても利点でしょう。

 

人口が減少していくので、不動産価格は下がっていくかもしれません。しかし、住み続けるのであれば値下がりしても気にすることはありません。せいぜい「自宅を売って老人ホームに入ろうと思ったけれど、自宅が安くしか売れなかった」といった程度でしょう。そうしたリスクを避けるためには、郊外の広い家から都心のマンションに引っ越しておく、といった工夫は必要かもしれませんが。

 

住民が高齢者ばかりのマンションは、管理費や修繕費が払えない高齢者が増えてスラム化するリスクもあるようです。そうしたリスクを避けるためには、若い人も住んでいるマンションのほうがよいのかもしれませんね。

「住宅ローンを借りて家を買う」意外なメリット

まったく異なる観点からも、現役時代に住宅ローンを借りて家を買うべきだと筆者は考えています。それは、人間の意志が弱いからです。

 

現役時代は借家に住んで、定年時に自宅を買おう、と考えているならば、住宅ローンは借りられないでしょうから住宅購入資金を全額貯めなければならないはずです。現役時代に借家の家賃を払いながら多額の貯蓄をするのは容易なことではないでしょう。

 

読者が禁煙やダイエットに苦労したことがなく、夏休みの最終日に泣きながら宿題をやった覚えが無いならばよいのですが、そうでないならば読者も意思が弱いでしょうから、ついぜいたくをしてしまって住宅資金が貯められない、という可能性を考えるべきです。

 

その点、住宅ローンを借りて家を買ってしまえば安心です。毎月銀行が強制的に返済資金を引き落としてくれるので、読者は残った預金の範囲内で生活するしかないからです。

自宅保有はお勧めするが、貸家経営はやめたほうが…

上記を読んで、筆者は不動産所有を推奨していると思った方もいるかもしれませんが、自宅以外の不動産(つまり貸家)を持つことはお勧めしません。

 

まず、貸家はそれほど儲からない、ということです。空き家のリスクもありますし、借り手が変わるたびに壁紙を張り替えたりする費用もかかりますし、住民のトラブルに対応する手間もかかります。とくに、少子化ということは新しく借家に住み始める人が減ってくるということですから、空き家のリスクはよほどの好立地でない限り十分に考慮すべきでしょう。

 

それから、自分の全資産に占める不動産の比率が高くなりすぎることはリスクです。とくに人口減少社会で不動産価格が値下がりするリスクには要注意です。

 

どうしても貸家を持ちたいというのであれば、REITという金融商品のほうがまだマシなので、それを検討してみましょう。プロが大勢の投資家から資金を集めて賃貸用不動産を購入し、それを賃貸して家賃収入を投資家に(手数料を差し引いて)分配する、というものです。不動産賃貸のノウハウがない個人が貸家を持つよりは、プロに手数料を支払って代行してもらったほうがよいだろう、ということですね。

 

本稿は、以上です。なお、本稿は厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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