前回は、土地の価格の形成に影響する各種要素について説明しました。今回は、土地売却のための「目安価格」の査定方法について見ていきます。

実勢価格の70~80%程度で算出される「路線価」

●目安価格の査定方法① 路線価や固定資産税評価額を調べてみる

「路線価」とは、国税庁が主要な路線ごとに算定する土地の価格基準です。相続税の基準となるもので、毎年1月1日時点の土地価格が対象です。路線価を算出するときには、その土地が面している道路の路線価をもとに計算します。実勢価格の70~80%程度とされ、国税庁が管理する路線価図等閲覧コーナーから調べることができます。

 

「固定資産税評価額」は固定資産税の課税額を決めるため、国が定めた基準をもとに市町村が定めるものです。一般的には実際の取引価格の60~70%程度と考えられており、3年ごとに見直しが行われます。毎年届く固定資産税の納付書を見るだけで、自分が所有する土地の固定資産税評価額がわかるので、もっとも簡単に調べられます。

 

●目安価格の査定方法② 公示地価や基準地価を調べてみる

「公示地価」は、地価公示法に基づいて国土交通省が毎年1回発表する土地の価格です。全国2万5270地点(2016年現在)を「住宅地」「商業地」「宅地見込地」「準工業地」「工業地」「市街化調整区域内宅地」「市街化調整区域内林地」に分けて査定し、取引の目安となる適正な価格を算出します。

 

査定を行うのは国の委託を受けた不動産鑑定士で、近隣の取引事例や家賃などをもとに1地点あたり2名以上で評価にあたります。対象となるのは毎年1月1日時点の地価です。建物がある場合にも更地を想定して評価され、1平米あたりの価格が毎年3月に発表されます。

 

公示地価は不動産や土地の売買にあたって「適正価格」のモデルとなる他、国や自治体の用地買収や賠償金額の算定基準にもなります。たとえば、道路用地として民間の土地を買収する際には、公示地価をもとに買収の交渉や補償金の支払いが行われます。

 

また、定点の地価動向を毎年算定することは経済の動きを把握する指標にもなるため、毎年公示地価が発表されると、それに合わせてマスコミが経済状況を分析する記事を発表しています。実勢価格の90%程度となっていることが多く、精度の高い価額です。

近隣の地価は国土交通省のホームページから閲覧可能

類似のものに都道府県知事が発表する「基準地価」があります。公示地価と同じく、指標となる地点の地価を算定し発表するものです。こちらも毎年1回発表されますが、対象となるのは7月1日時点の地価です。

 

また、査定される土地も、公示地価が主に都市計画区域内を対象とするのに対し、基準地価は都市計画区域外も査定の対象となります。

 

公示地価、基準地価ともに国土交通省のホームページから全地点を閲覧できるため、近隣の価額を調べることで、売却したい土地の価格の目安を知ることができます。二つの地価は市場での取引や賃貸市場の動向などをもとに算出されるので、実勢価格に近い数値が簡単にわかるのは大きなメリットです。

 

ただし、近隣で類似物件の取引が少ない場合には、公示地価や基準地価があてにならないこともあります。あくまで売却価格を決める上でのヒントと考えるのが適切です。

本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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