前回は、事業用不動産の売却交渉を有利に進めるための「売却に消極的」なスタンスについて解説しました。今回は、不動産の高値売却につながる「土地の加工」について説明します。

一般的なニーズに加えて「事情」を抱える買手も・・・

同じ不動産を購入したいと考えている人たちですが、買主候補にはそれぞれ事情があり思惑も異なります。たとえば住宅市場が厳しさを増す中、ハウスメーカーは表道路から奥まったところにある不動産など不人気が予想される物件にはあまり手を出しません。造成開発が必要な不動産にも関心を示さず、彼らが購入を希望するのは表道路に近くすでに造成が終わっている土地にほぼ限定されます。

 

一方、商業系は作りたいと考えている施設によって必要とする土地の広さや場所が違います。コンビニやドラッグストアの用地なら幹線道路に面した500坪前後の土地が最適ですし、スーパーやショッピングモールならもっと広い土地が必要です。

 

カテゴリごとの一般的なニーズに加え、まさにそのタイミングならではの事情を抱えている事業者もいます。たとえば、ハウスメーカーやマンションデベロッパーには年間に達成すべき建築戸数のノルマがあります。

 

年度末になってもノルマが達成されていない場合には、多少好みと違う土地でも購入せざるを得ません。経営者が不動産を売り出したタイミングが彼らの事情と合致すれば、通常なら買手にならないハウスメーカーが熱心な購入希望者になることもあり得るのです。不動産にどんな特性や広さを望んでいるのか、今は購入したいタイミングなのか、事情は事業者ごとに違うので、面談して聞き取ることにより、高値売却につながる不動産の加工方法が見えてきます。

エンドユーザーが「高値でも購入」する理由とは?

多くの買主候補と面談する中で少しずつ彼らの事情が見えてきたら、次の段階ではいよいよ買主を選びます。一番高い値段で買ってくれる人を選んで、その人が希望する形に不動産を加工するのです。

 

もっとも高く買ってくれる買主はエンドユーザーです。購入した土地に家や店舗を建て自身が利用する人たちなので、売却によって利益を生み出そうと考えていません。「次の買手」を意識する必要がないため、不動産が欲しいとなれば高値でも購入します。

 

不動産の特性によりますが、不動産買取再販事業者も高値で購入してくれるケースが少なくありません。加工により価値が高まる不動産であれば、市場価格より高い価格で購入しても再販する際に十分な利益を確保できるためです。

 

たとえば、査定価格2億円の不動産が分筆や造成、平面に加工することで5億円になるなら、購入費用や造成費用として2億円かかったとしても3億円の利益が見込めます。加工によって生じる利益が大きな金額になるため、他の買手候補に比べ高値をつけることができるのです。

 

商業系はその不動産での商売をシミュレーションした場合、どの程度の売上があり、不動産の購入費用がいくらまでなら十分な利益が出せるかを計算した上で、購入可能な価格の上限を算出します。

 

金融機関や仲介事業者は直接買手にはなりませんが、付き合う範囲が非常に広いので、高値で購入できるエンドユーザーを連れてくることがあります。

本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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