売却と購入を整理して、現金残を推定する
父親は以前に、3か所の畑やアパートを売却しています。生産緑地指定の30年が終了する2022年以降は畑が大量に売りに出されて価格が下落すると言われて、その前に売却しておいたほうがいいと不動産会社から勧められたということでした。
寿栄子さんが父親から聞いたところでは、3か所で6億円以上の価格で売却したようです。その後、新たに駅に近いテナントビルやアパートを3つ、購入していますので、畑や土地がビルやアパートになったと言えるのですが、借入が4億円も増えています。どうやら、売れた価格で購入ではなく、ほぼ借り入れで購入しているように思えるのですが、これも兄が主として動いていて、80代の父親は全体像を把握していないのが実情です。
当社で、売れたときに入った現金と購入時の支出を登記簿の抵当権額から想定してみましたところ、売れた譲渡税と購入の頭金を想定しても3億円以上のお金が残っていると思われます。
現状を把握、課題を整理して提案する「相続プラン」を委託
父親の財産は自宅土地、建物が500坪で1億円、賃貸ビルやアパート4棟、畑や生産緑地などがあり、不動産は8億円程と想定されます。預金残を3億円程度とし、借入れ4億円を差し引きしても、1億円を超える計算となりました。
しかし、相続税は現金で払えると判断できますし、現金を寿栄子さんと妹が相続し、相続税は家賃収入から分割払いをすることも可能だと判断できました。
当社では寿栄子さんからお預かりした不動産関係の書類をもとに現地調査をし、書類なども精査することで、課題を整理、対策の提案をする「相続プラン」の委託をいただきました。それから1カ月程度の時間を経て、提案書にまとめて寿栄子さんと妹さんに「相続プラン」の提案をしました。
現状の不動産評価と相続税の予想額を算出し、分割案の提案、相続税の納税案、相続になったときの流れとポイントなどを提案書にまとめて説明しましたところ、寿栄子さんも妹さんも「ようやく整理できてよかった」「相続税が払えそうで安心した」「自分たちも相続できる財産がありそうでイメージできた」と安心されたようでした。
課題は相続になってからの兄との遺産分割協議
普段から兄は寿栄子さんと妹には高圧的で、「不動産や相続のことは口出しするな」と言って説明もしてくれず、とにかく一方的に進めていて、聞いても答えないばかりか、起こり散らす態度で、それ以上は言えない状態であきらめてきたのが現状だと言います。
本来は父親が仕切ってくれるといいのですが、高齢になり、父親も兄には強く言えないでいます。しかも父親は遺言書を書くつもりはないようで、長男に任せてしまおうということのよう。
寿栄子さんと妹も、相続になったらきちんとしてもらおうということで、そのための準備として「相続プラン」を手がかりにしたいということでした。
父親が遺言書を用意しないということであれば、相続人で遺産分割協議をする必要があります。兄はいままでどおりに妹たちには詳細は教えずに「書類に印を押すように」「お前たちに分ける物はない」「不動産は全部、自分がもらう」といったことを言ってくるのではと想定されますが、全員の合意の上、遺産分割協議書を作成し、実印を押印、印鑑証明書を添付してようやく相続手続きができるのです。
相続の時には兄や養子のペースでは進められないので、そのときこそ自分たちの主張をするようにとアドバイスしたところ、寿栄子さんたちも「そのつもりなのでサポートしてください」ということでした。