宗教法人の代表を務めていた父が亡くなり、遺された不動産の管理について相談しに来た春男さん。調べてみると宗教法人にいくらか土地を贈与していたことがわかりました。しかし宗教法人の代表者である父は亡くなっています。処分を考えねばなりません。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、名義人がいなくなってしまった財産の管理方法について解説します。
父親が亡くなった
春男さん(55歳)は4人きょうだいの長男で、姉と2人の妹がいます。4人とも就職や結婚などで実家を離れていて、両親が二人暮らしをしてきました。母親は15年前に亡くなり、その後は85歳の父親が一人暮らしをしていました。
春男さんも姉や妹たちも実家からは遠く離れたところに住んでいて、長男の春男さんも実家に戻る予定はないといいます。その父親が亡くなり、春男さんが相談に来られました。
自宅敷地で宗教法人の活動
父親は地方の最寄り駅から徒歩5分のところに住んでいます。春男さんが学生の頃から父親は宗教の信者となり、地域の幹部となり、最終的には代表までのぼりつめました。そのため、自宅の敷地に宗教法人の建物を建てて、父親が取り仕切っていました。
しかし、父親も会員信者も高齢となり、次の世代の後継者がないことから宗教法人の活動も継続できなくなりました。父親が一人暮らしをしにくくなったことで介護施設に入所してからは、まったく活動できておらず、実家も宗教法人の建物も空き家となっていました。
実家には戻らない
父親は自分の財産はすべて宗教法人に注ぎ込んでいましたので、介護施設の費用は年金と春男さんの援助で支払ってきました。財産は実家の不動産だけということで、相続税がかかる範囲ではありません。
姉と妹は不動産のことは長男である春男さんに任せると言っています。皆、実家に戻ることはないので不動産はいらないということです。
春男さんもすでに実家を離れて久しく、また自分の家を購入しているため、実家に戻って生活する選択肢はありませんので、地元で使いたいという人がいれば贈与してもいいと考えています。そうするにしても、いったんは相続手続きをしなければなりません。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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