顧客の予算や希望を正確に把握する
したがって、物件を適当に紹介して、顧客があわよくば住宅を買ってくれるのではと考えるべきではありません。顧客の年収や、現実的に可能な月々の返済額の予算などを聞いたうえで、そこに合致しない物件は、自社がどれだけ売りたいと思っていたとしても、紹介すべきではないのです。
言い換えれば、住宅セールスの際には、顧客の予算を正しく算出することが売れるセールスのスタートラインであるともいえます。その際、顧客自身が書いたアンケートの情報だけをうのみにしてはいけません。顧客は、少しでも安く買いたいからと低めに言うかもしれませんし、虚栄心から高めに伝えるかもしれません。
また、自分たちの予算を正確に計算できていないケースが少なくありません。面と向かって、実際の年収、借金の有無、借入可能額、金利を踏まえた月々のローン返済額など、予算面の情報をきちんと明らかにした状態で住宅探しを進めるべきです。そのためには、セールスは顧客の経済面の情報をできるだけ早期に、細かく把握するスキルが求められるのです。
例えば、4,000万円くらいの家が欲しいと希望する顧客に、好条件な物件だと5,000万円や6,000万円の住宅をすすめるようなセールスは完全にNGです。そのような不誠実な対応は避けなければなりません。
今はSNSで情報が拡散される時代です。セールスの口車に乗せられて、無理な金額の住宅を購入したら、とても後悔しているなどのクレームを住宅情報の口コミサイトなどに投稿されれば、「この企業は顧客に優しくない不当な企業だ」と、企業の信頼は地に落ちてしまいます。
そうしたダメージを受けないためには、担当者に求められるのは分譲セールスのスキルのみならず、倫理観をも含めた「分譲セールスリテラシー」なのです。顧客の予算や希望を正確に把握し、それに合致する物件を誠実に提案することが、住宅セールスにおいて最も重要な姿勢だといえます。
顧客の人生設計に寄り添い、無理のない範囲で最適な住宅を見つけ出すことこそ、セールスに求められる役割なのです。そうすることで、顧客との信頼関係を築き、長期的な顧客満足度の向上につなげることができます。企業の評判を守り、持続的な成長を実現するためにも、セールスには高いリテラシーと倫理観が不可欠なのです。
