戸建分譲のリスクを踏まえたKPIを設定する
用地仕入れから開発、企画、販売、アフターメンテナンスと続くSPA戦略を実践するには、どのタイミングでどのような戦略意思決定を下すのが良いのかを明確にしておく必要があります。
例えば、用地契約の経過日数に応じて販売状況がどのような状態であるべきかという基準が明確になければなりません。蓄積した事業データから独自に指数化し、戸建分譲事業ならではの細かなKPIを設定することが必要なのです。
一人あたりの販売棟数(注文住宅経営の現場では、よくPH:パーヘッドと表現します)や、利益率だけを管理していたのでは戸建分譲事業はうまくいきません。「一区画あたりの販売期間は何カ月か?」など、戸建分譲事業では追いかけるべきKPIが異なるのです。
注意すべきなのは先に資金を投じて商品を販売して資金回収をするだけに、リスクと隣り合わせであるということです。KPIが異なるのに注文住宅事業の延長で、なんとなく始めた戸建分譲事業が、大当たりしたのに味をしめて用地仕入れを強化し、その後在庫に苦しみ経営をひっ迫するという例は枚挙にいとまがありません。
参考にすべきは大手分譲マンションのブランディング戦略
では、リスクを最小限にしながら、大きなリターンを得て着実に事業を伸ばしていくためにはなにが必要か──それはブランディングです。
ブランディングというと、「自社の魅力や強みをアピールすること」と勘違いしている企業が多いのですが、顧客が知りたいのは、それを買えば自分はどのような生活を送れるかという、顧客の想像力を手助けするのに役立つ情報です。
家の情報と聞いて一般的に思い浮かぶのは、間取りや近隣にある学校や公共施設などのロケーション情報ですが、これらはブランディングという意味ではあまり役に立ちません。ブランディングにおいて大切なのは実際に現地に行ってみたいと思わせる動機づけです。
その家でどのような生活ができるのか、どのような気持ちになるのか、どのような人生を歩むことができるのか、つまり住みたい、最低でも現地を見てみたいと思わせられる情報を最初に提供することで、ブランディングが実現できるのです。