時には不都合な情報も提示する
セールスの仕事は、顧客にとって本当に良い物件を紹介することです。しかし、理想的な物件がすぐに見つかればよいのですが、必ずしも都合良くいくとは限りません。現実的には、手持ちの物件のなかから顧客に選んでもらわなければなりません。
そのためには、物件の案内方法をしっかりと考える必要があります。最大のポイントは、不都合な事実も時には伝えるということです。例えば、顧客が「利便性が高く、広くて静かな家」を求めていたとします。
そのようなときは、無責任に期待を持たせるのではなく、用途地域や路線価などによってエリア別の価格差が分かる住宅地図などを見せて、利便性の高い場所は総じて坪単価が高いという現実を理解してもらいます。
坪単価が高くなると、当然家の総額も高くなります。土地の総額は坪単価×面積(坪)で計算されるからです。顧客が理想の予算額を持っている場合、坪単価が高くなるならば、予算内に収めるためには広い面積を実現するのは難しいことが予想され、面積で妥協せざるを得ません。
また、利便性の良い場所は、しばしば繁華性の高いエリアでもあります。これらを考慮すると、利便性が高く、静かな場所という条件を満たすのは難しいことが分かります。本当に広い家が欲しいのであれば、利便性を譲歩しなければならないし、利便性を優先したいのなら、多少狭くても妥協しなければなりません。
このように、最初に挙げられた条件のうち、最も優先したい条件は何か、譲れる部分はないかを顧客と一緒に調整していくことが大切なのです。
分譲セールスに求められるのは分譲セールスリテラシー
住宅選びの基準の優先順位が決まったら、住宅の概要を見せながら、その概要の背景やロケーション、理由などを説明できるように、情報収集することが必要です。
例えば、「ハザードマップ上で災害が想定される地域に該当しない場所で、駅から近く、価格はなるべく抑えたい」という条件で家探しをしている顧客がいるとします。災害等の被害が予想される危険地域は当然避けて紹介しますが、100%安全なエリアというのはめったにありません。あったとしても、そういう場所は地価が高いのが業界の常識です。
そのため、土地の地歴を説明しながら、どのエリアが災害の影響を受けやすいのか、そして価格の高騰や下落にどのように影響するかという現実的な情報を伝えていく必要があります。このような情報をもとに、顧客の望む住宅の候補が絞れてきたら、その場所の災害履歴なども調べておくと、顧客にとって住宅を選び切るための材料になります。
顧客それぞれの条件に寄り添って、時には不都合な情報も提示することが大切です。それは顧客を教え導きながら寄り添ってセールスをおこなうことであり、顧客それぞれの価値観に合わせて、分譲地が持つ固有の価値を語ることにもなるため、分譲地のPRにもつながるのです。
