分譲住宅の増加要因は「注文住宅マーケットの限界」
二つ目の理由は、「家に求める価値の変化」です。
かつて家を建てることは、一生に一度叶えられるかどうかの夢でした。特に昭和から平成にかけてのサラリーマンにとっては、順調に出世コースに乗り、郊外に庭付き一戸建てをローンで建てるというのが長くステイタスシンボルになっていました。
それは、日本人の土地に対する信仰心の裏返しであり、住宅業界でも自分の土地を所有する「土地あり客」は神様のような存在で、そうした土地あり客を対象とすることで注文住宅市場は成り立ってきました。
しかし、時代の流れとともに状況は変化し、バブル経済崩壊後の地価下落や、少子高齢化の進行などにより、土地を持たない「土地なし客」が主流になりました。土地価格や建物原価の上昇、収入の先行きの不安などから彼らが購入できるのは土地と建屋がセットになった分譲住宅です。[図表3]
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「土地なし客」にとって家というのは、土地と建物がセットになった商品の一部、すなわち「物件」の一部ととらえます。そうした土地なし客が圧倒的に多い今、どのような家を「建てる」かより、どのような家を「選ぶ」かにマイホーム取得計画のベクトルが向くのは当然のことでしょう。
その場合、請負契約をして一から建てる注文住宅は必ずしも選択肢の最有力候補にはなりません。手軽で住みやすく、コストパフォーマンスの高い家が求められるようになってきました。それは、予算に合わせて最適なマイカーやアパレル商品を選ぶ感覚に似ています。
つまり一軒家も世の中に数多くある「商品」の一つになってきているのです。生活者の価値観が建てるより選ぶことに向かいつつあることから、分譲業界が注目されているのです。
