キリンビールがトップシェアを奪回できたワケ
「理念をどう実現するか」一人ひとりが考えて動く 田村潤
元キリンビール株式会社代表取締役副社長
全国の営業の指揮をとり、2009年にシェアの首位奪還を実現。従業員とお客様に響く理念を唱え、従業員自らが新しい販売のしくみを生み出し、多くの業績を残している。
著書はベストセラー『キリンビール高知支店の奇跡』(講談社)『負けグセ社員たちを戦う集団に変えるたった1つの方法』(PHP研究所)ほか多数。
数字達成に燃えなかった社員も燃えた「高知支店の理念」
キリンビールがトップシェアを奪回できたのは、ヒット商品があったからではありません。理念のしくみ化ができ、社員の心の置き場を変えられたからです。
『キリンビール高知支店の奇跡』には、理念から始まるビジョンを元に、V字回復を実現された実例が多数掲載されています。
理念実現を目標にするとすべてがうまくいくことに気づき、理念のしくみ化に取り組み始めたのは、1997年の秋頃の話です。当時、あらゆる活動について、「目標数値の達成」から「理念を実現するためのもの」というように、意味合いを変えていきました。
そのときにわたしが掲げた高知支店の理念は、「キリンビールを飲んでいただき高知の人にしあわせになってもらう」です。
数字達成には燃えなかった社員たちも、この理念には燃えていました。
お客様のためにがんばるとお客様が喜んでくれるので、それが嬉しくてまたさらにがんばることができます。その繰り返しで、自分の使命はここにあると気づいていったのです。
おかげでメンバーが個性的になり、組織が明るくなり、平等になっていきました。
支店長も女性社員も役割は違いますが、役割をまっとうすることにおいては平等です。現場の一人ひとりが顧客に向かい、内部の社員がそれをサポートし、情報はすべて共有化しました。
そうすることで、理念の実現に社員一丸となって向かっていったのです。
