晩婚化・出産年齢の上昇で、子どもの教育費負担のピークと夫婦の老後資金を準備すべき時期が重なるケースが増えています。また、年を重ねてやっと授かった我が子のためと、お金を惜しみなく注いだ結果、厳しい家計から老後破綻まっしぐらになるケースも。一例をご紹介します。

ひとり息子を溺愛する妻の「恐ろしい家計管理」とは

三島康さん(仮名)はこのたび65歳になり、長く働いた会社を退職しました。三島さんは46歳で9歳下の妻と職場で出会い、結婚しました。

 

その後まもなく生まれたひとり息子は、年を重ねた三島さんにとって目に入れても痛くないほどかわいい存在でした。しかし、それを超える勢いで息子を溺愛したのが妻。息子にできる限りのことをしてあげたいというのが夫婦共通の考えでした。

 

休日は息子のためのお買い物。そして息子が2歳になるとお稽古通いを開始。英会話、スイミング、ピアノ、空手と種類は幅広く、その後、塾通いを経て中学校からエスカレーター式の私立へ。通学しやすいエリアにフルローンでマイホームを購入しました。

 

こうして息子に尽くす夫婦でしたが、当然収入には限りがあります。三島さんはもっともよい時で年収750万円ほど。妻はパート勤めで、世帯年収は多い時で900万円程度でした。

 

もちろん少ない世帯年収ではありません。しかし、三島さんの年収は年を重ねるごとに下がっていきます。役職定年、60歳の雇用形態の変化で、定年間際の年収はピークの半額を切るほどになっていました。

 

一方、家計を管理していたのは妻。三島さん自身は昔からお金の管理が苦手だったため、妻にすべて任せていたのです。しかし、これが大きな間違いでした。

 

家計が厳しいことに薄々気づきながらも、妻は三島さんにそれを伝えないまま生活していました。そんな状態で三島さんは年金生活に突入。年金額は月21万円ほど(加給年金含む)で、妻のパート代と合わせて30万円そこそこです。

 

60歳時に三島さんが受け取った退職金もあったので、三島さん自身は家計に問題があるとは気づきませんでした。しかし、実際にはローン返済や息子の教育費で残高はどんどん減少。老後資金を貯めるどころではなかったのです。

 

そして、このままの生活ができなくなるという段階になってはじめて、三島さんは妻から事実を告げられました。

 

通帳を見ると、残高は120万円を切る程度。お金に無頓着な三島さんも、この金額で今の生活を維持できないことはわかりました。しかし、妻だけを責めることはできません。自分も「息子のため」と言いながら一緒にお金を使ってきた事実があるからです。

 

結局、自分は再就職先を見つけ、妻もパートを増やし、さらにマイホームの売却も検討。大学に入学したばかりの息子にも事情を説明し、奨学金を借りることも考えています。

 

何よりも大事な息子に不安を抱えさせることになった事実に、夫婦は意気消沈することになったのでした。

 

晩婚世帯は貯蓄や節約の意識を高める必要がある

「我が子のかわいさはひとしお」「なんでもしてあげたい」と考えるのは親として当然でしょう。しかし、際限なく何でもやってあげようとすれば、自分の老後資金を貯めることも難しくなります。

 

あくまで家計の範囲内で、教育資金と老後資金の両方を計画的に準備する必要があります。子どもができた時に高齢であるほど現役時代も短く、教育費・老後資金・住宅ローンの返済などを短期間で準備しなければならなくなります。

 

晩婚化の時代では、「子どものため」とお金をかけ過ぎることなく、計画的な貯蓄や節約の意識を一層高める必要があるといえそうです。

 

【参考】

厚生労働省「人口動態調査」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html

国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」

https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/doukou16_gaiyo.asp

生命保険文化センター「ライフイベントから見る生活設計」

https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/803.html

 

 

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