介護人材の不足に拍車をかける「もうひとつの要因」
介護人材が不足しているのは、新たな人材の確保に苦戦しているからだけではありません。介護職の離職率の高さも現場の人手不足に拍車をかけています。
介護職の離職率は2007年度の21.6%をピークに、緩やかに下がってきました。
以前に比べれば全産業の平均に近づいてきているのですが、それでも2022年度は14.4%で、低いとはいい難い数字です。
仕事の大変さに見合わない給与や職場の人間関係のトラブルなどにより、介護の仕事に就いても離職してしまう人は少なくありません。
厚生労働省の「賃金事情等総合調査 賃金事情調査」によると、2022年度の調査対象全産業の平均勤続年数は17.3年です。これに対し、介護職員の勤続年数は介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によると平均約8年となっています。
頻繁に人の入れ替わりがあれば、職員の教育に時間と手間を割かなければなりません。
ただでさえ人手が足りておらず、それぞれのスタッフにかかる負担が大きいのに、さらに新しく入った職員の教育まで担うのは物理的にも心理的にも大きな負荷がかかります。職員のハードワークが続けば思わぬ事故を引き起こすことにもなりかねません。
介護の仕事は人の命を預かる仕事です。安全な介護サービスを提供し続けるためにも、人材の確保は介護業界にとって急務なのです。
井筒 岳
社団医療法人啓愛会
理事長