小規模借り手を支援する新たな施策
FIDFの費用削減により、商業銀行は年間約390億バーツ(約1,777億円)の節約が見込まれ、この金額を再配分して債務再構築の支援に充てるとともに、国有銀行による費用は国の基金がカバーすることになる。
これを支援するため、政府はノンバンク融資機関に対して2%の低金利で500億バーツ(約2,278億円)の融資を提供する。
一方で、小規模な借り手で各アカウントの未払い債務が5,000バーツ(約2万円)を超えない場合には、債務解決策も用意されている。
これらの借り手には、貸し手と債務者の合意に基づき、支払うべき額の10%または50%を支払うことでローンを完済するオプションが提供される。この措置は、2024年10月31日時点で90日以上の遅延がある個人の借り手に適用される。
経済学者の反応は
最新の債務救済措置は包括的であり、債務者の負担を軽減する可能性があるものの、一部の経済学者はその効果について慎重な見方を示している。
「これらの措置は症状には対応していますが、根本的な原因には対処していません」と、キアットナキン・ファトラ・フィナンシャルグループのマネージングディレクター兼チーフエコノミストであるピパット・ルエンナルエミチャイ氏は述べている。「根本的な原因は、収入が十分でないことです」(同氏)。
彼は、債務者が割引された債務を返済できるかどうかに疑問を呈している。経済の成長が鈍化しているため、賃金の上昇や人々の収入の増加にはつながりにくいと指摘している。
しかし、この債務救済パッケージは、一部の債務者にとっては役立つ可能性がある。特に、再構築された債務を返済できる人々にとっては、有益になると彼は述べている。
「これは短期的な痛みを伴うものの、長期的には利益をもたらすものであり、債務支払いを再開した者は、過去の悪い財務履歴が改善されることで、新たなローンへのアクセスを再開できる可能性があります」(ピパット氏)。
また、経済学者たちは「道徳的危険」の問題についても注意を促している。債務を期限通りに返済してきた多くの借り手が、SNSなどで「真面目に返済しているのに、救済措置の恩恵が受けられない」と不満を訴えている現状があるのだ。このような不公平感が広がることで、今後の返済意欲が損なわれる可能性が懸念されている。
ピパット氏は、もし債務者が政府からさらなる支援を期待しないのであれば、道徳的危険の問題はそれほど大きな問題にはならない可能性があると述べている。
国立開発行政研究院(NIDA)のサンティ・ティラパット准教授は、ピパット氏と同様の見解を示し、債務再構築の成功は経済全体の成長に大きく依存しており、その展望は決して明るくないと指摘している。
最終的には、納税者がノンバンク融資機関や国有銀行によって生じたコストを負担しなければならないと、サンティ氏は述べている。
